今年5月の発売から話題となり、今も品薄が続いているスーツケースがある。それが、明治26年(1893年)創業の老舗鞄メーカー、サンコー鞄の「SUPER LIGHTS MG Premium」だ。その特性は傷が直る“自己修復塗装プレミアムコート”。ボディ表面に施された特殊なコーティングによって、傷がつきにくく、多少のすり傷なら復元する機能を持つ。果たしてどんなものなのか。

サンコー鞄 SUPER LIGHTS MG Premium
SLMP-57 約57×63×70cm 約3.6kg 約55L (実勢価格:3万450円)
SLMP-63 約63×45×30cm 約3.9kg 約72L(実勢価格:3万2550円)
SLMP-70 約70×52×31cm 約4.5kg 約97L(実勢価格:3万4650円)
[画像のクリックで拡大表示]

 サンコー鞄にスーツケース表面の塗装の変遷を聞いてみた。以前は、強度を持たせるためデコボコしたエンボス加工が主流だったそうだが、2000年代に入ってから現在のようなピカピカのボディが登場してきた。これは、ボディ本体の素材に堅牢なABS樹脂が使われるようになったから。それにクリアコートをかけてピカピカに表面加工したものが流行ったという。ところが、ABS樹脂は重い。そこで、軽量で衝撃に強いポリカーボネイトが使われるようになった。最近ではさらに「HTポリカ」などの超軽量化を図ったスーツケースも登場している。このポリカーボネイトは、通常なら表面加工は必要ない。ところが、こすると細かいすり傷ができる。静電気で細かいホコリがつきやすく、それを手荒く拭いても傷になる。店頭で見た時はピカピカだったのに、使っているうち細かい傷が目立ってしまうのだ。そうした悩みを解消するため、自己修復機能を持つ塗装の開発に取り組んだ。

 同じような自己修復機能を持つ塗装は、ここ数年、高級車などにも使われている。「SUPER LIGHTS MG Premium」のプレミアムコートも同じような仕組みで、異なる成分を合成した特殊な樹脂で塗装し、その塗膜がある程度破壊されても変形して傷を復元するというもの。ただし、車などの金属ボディとポリカーボネイトは素材が異なるため、樹脂成分の配合を工夫したり、定着にかかる時間や乾燥など試行錯誤を繰り返し、製品化までに1年半かかったという。

 どの程度の傷まで大丈夫かというと、えぐれたり、尖ったもので塗膜を貫通した傷の修復はできない。ただし、浅い擦り傷なら温度が高いほど早く復元する。気温が10度以下では修復が遅くなり、0度以下では機能が働かないが、温めれば修復されるそうだ。「使用上の注意」を読むと「常温の場合は1~3分程度で修復されます」とのこと。試しに表面をこすってついた線は、手のひらで温めるとすぐに消えた。

表面をこすったくらいだとすぐ消える
[画像のクリックで拡大表示]

 傷が直ることにも驚きだが、実はそれ以上に驚いたのが、見た目から想像できないほど軽くてハンドリングしやすいこと。この「SUPER LIGHTS MG Premium」は、軽量で大容量を実現した同社のヒット商品「SUPER LIGHTS MG」をさらに進化させたもの。スーツケース本来の使い勝手を究めた上で、見た目の維持や手入れの利便性まで進化させたわけだ。100年以上の歴史を持つ同社は、日本で一番早くTSA LOCKを搭載したスーツケースを発売するなど、常に技術革新を追求してきた。傷がなおる「SUPER LIGHTS MG Premium」は、スーツケースの新たな進化形といえるかもしれない。

軽くてハンドリングしやすいのが特徴
[画像のクリックで拡大表示]

(文/波多野絵理)


「日経トレンディ」1月号のご案内
【第1特集】「日経トレンディが使って選んだ買いの逸品BEST 101」
【第2特集】「決定版! 家電量販店で得するテク」

日経トレンディ 日経トレンディ 1月号
12月4日発売
特別価格:600円(税込み)
発 行:日経BP社

日経BP書店で買う

AMAZONで買う