こんにちは、西友の富永です。

 今回は、現在個人的に関わっている小さな野菜農家の話をしてみようと思います。

 最初にお断りしておきますと、この事例はまだ道半ばであり、成功するかどうかは今後の展開やその農家の頑張りを見守らないと分かりません。ですが、小さな事業を行っている方々がマーケティングとして「どういうことをすべきか」という問いに対する1つのヒントになるのではないかと思い、紹介する次第です。

 少し前に、ある若い友人(女性)から相談を受けました。

●ご主人と野菜の農園を運営
●味と安全性にこだわり、技術的に裏付けのある農法で無農薬野菜を生産
●少ない品種を大量に生産するのではなく、定番からちょっと珍しいものまで、旬のさまざまな野菜を少量ずつ生産
●宅配とほかの農園と共同で出店する直売所で販売
●コミュニケーションは自身のブログ、宅配パックに同梱するA4の印刷物がメイン

 という状況。たくさんの小規模農園が存在するなかで埋もれることなく野菜を作り続け、自分たちの考えをお客様にきちんと伝えてファンを増やし、彼女らとの絆を築いてきたいとの次第。そのとき彼女は5センチ四方くらいの大きさの紙に、消しゴム版画で意匠を印刷したものを持参しており、私に手渡してくれました。それはとても温かみ、味のあるPOPでした。

 その後、何度か野菜を送っていただき、実際に野菜を手にとってみると、いくつもの驚きがありました。ピーマンや丸ナスやシシトウなど、生き生きとした野菜に包丁を入れたときに立ち昇る香り高さ。そして料理していただいたときの濃い味。相談を受けたときに聞いた「味にこだわった野菜を作っている」という話は、間違いのない事実でした。

 また、そこに同封されていた印刷物も手作り感があふれ、思いがこもったものでした。同梱されていた珍しい野菜の紹介や、それらをどう料理したらおいしいかなど、自分たちが手塩にかけて育てた野菜の価値をできる限り伝えたいと強く願っている作り手の気持ちが伝わってきました。

 まとめると、この夫婦は本当に真摯に良い野菜を生産しようという意思があり、その方法も学んで自分のものにしており、それを顧客に伝えるべく懸命に努力をしていました。

 一方、「彼女らがやりたいこと」「お客様に伝えたいメッセージ」「お客様と築いて行きたい絆」などがどういうことなのかが明確には言語化されておらず、どんな媒体を使い、それぞれの媒体にどんな役割を負わせるかなどの戦略が未整理でもあり、結果として彼女らの意図や意志が思い通りに発信できていない状態でもありました。

 私は真剣な姿勢に打たれ、その思いを達成する手助けをしたくなり、彼らのブランド構築をサポートしようと心に決めました。

味と安全性にこだわった無農薬野菜を生産している
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手作り感のある印刷物で野菜の特徴や料理法などを紹介
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