小さな書店は姿を消してしまったニューヨーク

 2012年9月の時点で、最初のiPadの発売から2年半が経った。現時点では、当時危惧された電子書籍端末としてのiPadは、思ったほどは書店流通の脅威にはなっていないように見える。業界ではむしろ、本自体が売れなくなっていることの方がはるかに脅威だという認識が強いのではないだろうか。  

 一方で、楽天がカナダの電子書籍端末会社を買収して発売にこぎつけたkoboの登場や、アマゾンのキンドルの本格的な日本上陸など、周囲はあわただしい状況になり始めている。電子書籍がヒットするのはもはや時間の問題である。  

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 私は本業であるコンサルティングの仕事を通じて、これから2年半後には、現在の状況は完全に逆転して、書籍は書店用ではなく電子端末用が主流になると予測している。この浸透スピードは、CDが音楽ダウンロードに置き換わるトレンドと同等か、それよりもやや速いというイメージである。  

 音楽のCDからダウンロードへの移行は、比較的短期間だった。2000年代初期から中盤にかけて、違法ファイルのダウンロードとの戦いがあったが、結果的には、CDのコピープロテクトの試みは、消費者の支持を得ることができずに敗れ去った。そして、逆に公式に安価な音楽ダウンロードを提供するiPodの仕組みの成立が転機となり、最終的に音楽のダウンロード購入が活発に行われる時代となった。ちなみに、日本市場ではこのストーリーに着うたが加わる。  

 結果として起きたことは、音楽流通の大きな部分が、レコード店チェーンからアップルや通信会社系の音楽ダウンロード会社へと移ってしまったこと、そして、ネット時代らしく、買われる楽曲が分散してメガヒットが生まれにくくなったことだ。  

 電子書籍もこのままでいくと同じ道筋をたどるだろう。最終的には、電子書籍が普及するとともに、書店の数が減り、書籍流通の役割の大きな部分が、アマゾン、楽天、アップルへと移行する。そして、書籍が売れる仕組みも、書店店頭でのおすすめ中心から、ネットでの話題に依存するようになる。  

 実はこのコラムを書いている今、私はニューヨークに来ているが、十年前と比べるとマンハッタンにたくさんあった小さな書店はかなりの数、姿を消している。大手書店もボーダーズがライバルのバーンズ&ノーブルに吸収され、全米で1チェーン体制に集約されようとしている。そして、空港の待合室では、電子書籍端末を持った人々の姿が目立つ。  

 私はコンサルタントでありビジネス書籍作家であるという立場から、この「書店が消え去るかもしれない」という未来を、かねてから苦々しく思っていた。時間がこの先あまり残されていないということに焦りを感じているのも事実である。  

 別の未来は作れないだろうか。つまり、街中には書店が多くみかけられて、誰もがたくさん本を買って読み、作家や出版社もじっくりといい本を作る時間をかけられるような未来である。  

 そのために、私が考えてきたことを、今回はお話しさせていただきたい。