『絵本 地獄』(監修:宮次男、構成:白仁成昭・中村真男、装幀・レイアウト:貝原浩)1575円(画像クリックで拡大)

 風濤社(ふうとうしゃ、東京都文京区)から1980年に出版された『絵本 地獄』が、今年に入ってから爆発的に売れている。昨年までの32年間で11万部を売っていたが、今年に入ってから半年間で8万部を増刷。その後さらに勢いが増し、現在までで12万部の増刷となっている。一部書店では品薄状態で、これからもさらに売り行きは伸びそうだ。

 この絵本は千葉県三芳村の延命寺に所蔵されていた「地獄極楽絵巻」に、文章をつけたもの。1980年当時、自殺する子どもが相次いで報道されたため、自殺を抑止する目的で出版された。巻末に「自殺するのは親不孝。死ぬと地獄に落ちる」「命を大事にしろ」というメッセージが記されている。

 爆発的に売れ始めたきっかけは、人気漫画家の東村アキコ氏が、育児コミック「ママはテンパリスト」の中でこの絵本のエピソードを描いたこと。やんちゃ盛りの息子のしつけにてこずっていた時、この絵本を見せて脅かしたら、見違えるほどいい子になったという。

 その話を聞いた同社では、編集部経由で東村氏に連絡を取り、「うちの子はこの本のおかげで悪さをしなくなりました」という推薦の言葉と、東村氏の絵を帯に掲載。するとエピソードが掲載されている「ママはテンパリスト」の単行本第4巻が発売された2011年11月からじわじわと売れ始め、今年に入ってから爆発的に売れるようになったという。

 同社社長の高橋栄氏によると、絵があまりにショッキングなため、発売当時は書店営業に苦労したとのこと。児童書コーナーに置いてもらうどころか、表紙がちらりと見えただけで追い返されたこともあるという。しかし次第に同書の意図が伝わり、「強烈だけどいい本」「命の尊さという、理屈だけでは説明しにくい大きなテーマを、わかりやすく伝えている」と評価が定着。若者に人気の書店、ヴィレッジヴァンガードでは数年前から定番商品として置かれ、「ファンキー」という評価もあった。だがこれほどまでの勢いで売れるとは同社でも思ってもいなかったという。

 子供のしつけ用に読まれていることについては、「読み手が思いおもいに受け止めていい」とのこと。ネット上のレビューを見ると、本来の意図はきちんと受け止めてもらえていると感じるそうだ。「子供に読み聞かせると怖がって泣いてしまったのに、しばらくしたら自分で取り出してまた読んでいた」という話もあるそうで、「怖いけど、何か子供を強烈に引きつける魅力があるのでしょう」と高橋氏は話す。

(文/桑原恵美子)