発売まで4年間紆余曲折が続いた「クリスピーサンド」

ハーゲンダッツの「クリスピーサンド」のサイト
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 ハーゲンダッツにアイスクリームをウエハースで包んだ「クリスピーサンド」という人気商品があるのは多くの方がご存知のことだと思います。開発を担当したのはハーゲンダッツ ジャパンの大橋厳太氏で、意外なことに日本発純和製の商品なのです。2001年春に発売されるやすぐに大人気を博しただけでなく、その後フランスでも発売となり欧州でも大の人気商品になっています。アイスクリームという洋モノ商品分野で日本人が開発した商品が欧州で大人気だというのは小気味いい話ではないでしょうか。

 発売後の順調な販売の推移に比べて、その開発は困難を極めました。大橋さんは1996年8月にほかのアイスクリームメーカーから途中入社。すぐに開発部門をまかされ、前任者から引き継いだのがクリスピーサンドだったのです。当時既に商品は一応完成段階に入っていて、それはラズベリーソースをベースにしたものでした。その後テスト販売でまずまずの結果を得たため専用の工場も建てたのですが、最終確認のための消費者調査の結果が芳しくなく、何回も改良、審査を繰り返すも合格に達することができず、大橋さんの苦悶の日々が続いたのです。「もう、やめようと、何回も思いました」と語っています。

 あるとき同僚からの助言もあってキャラメル・ソースという発想にたどり着きます。そのあとはトントン拍子で商品化が進み、評価も上々で一気に発売まで持って行くことができたということです。

「大切な人」を思い浮かべながら発想する

 今回ご紹介するのは、みな私が心から敬愛する、日本を代表する開発・革新の達人たちです。皆さん、長く語り継がれるいい仕事をされてきましたが、共通しているのは、いかに達人といえども幾多の挫折を乗り越えて成功にたどり着いているという点です。挫折なしに仕事が進むというのではなく、挫折しながらそれを超えられるところが達人のゆえんなのでしょう。

 上でご紹介したように、大橋さんは「もうやめよう、と何回も思った」と語っています。しかし思いとどまって最後に花を咲かせるところが達人なのですが、それを支えたものは何だったのでしょうか。大橋さんからいただいたスライドの中に「開発者の心得」というページがあり、その中に「もっとも大事にしたいこと(おどろき、よろこび、笑顔)」という項目があります。それに関連して、大橋さんは「私には、行き詰まったもうだめかなというときに、いい発想に巡りあう奥の手があります。それは大切な人をよろこばせたいと強く思うことです」と語っています。クリスピーサンドのときのどん底を救った「大切な人」が誰だったかは残念ながら聞きそびれました。

 新製品の開発は技術論だと考えられがちですが、技術論の最先端のさらに先に行こうとするとこのような精神論になるのでしょう。以下にもご紹介するように、皆さん、仕事の進行上で何度も壁にぶつかり挫折しながらも、「大切な人」に支えられてそれを克服するところは見事に共通しているのです。