米国では最近、司法省がアップルと大手出版社を提訴するなど、電子書籍を巡る話題に事欠かないが、米国の電子書籍市場の60%のシェアを持つ最大手アマゾンの新たな仕掛けが話題になっている。それはオンデマンド・プリンティングである。

電子書籍市場を巡る競争の激化

 米国では未だに電子書籍は成長市場と認識されているようで、電子書籍ビジネスを巡る話題が多い。その中でも最大のものは、米国司法省によるアップルと出版大手5社に対する提訴であろう。

 もともと電子書籍市場を開拓したアマゾンは、紙の書籍と同じ卸売方式で書籍を出版社から買い取り、新刊やベストセラーの電子書籍を9.99ドルという破格の安値で販売していた。

 しかし、この安値は紙の書籍のビジネスにも大きな影響を及ぼすので、iPadの発売を機に、大手出版社はアップルとの間でエージェンシー方式の契約を結び、電子書籍の価格は出版社が決めることとした。その結果、新刊やベストセラーの電子書籍の価格は12.99~14.99ドルに上がった。

 この過程での大手出版社とアップルの“共謀”を問題視して、司法省は提訴に踏み切ったのだが、この提訴はアマゾンが9.99ドルでの安売りを再開する追い風になると認識されている。

 iPadが発売される前はアマゾンが電子書籍市場の90%のシェアを持っていたのが、最近時点では60%に下がり、Nookを提供する大手書店バーンズ&ノーブルが25%、アップルが15%のシェアを獲得するに至っていた。この構図が今回の司法省の提訴でまた大きく変わる可能性が高いのである。

新たな仕掛けが話題となっているアマゾン。電子書籍市場では、他社との競争も激化している
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 そこで、司法省の提訴から間もなく、バーンズ&ノーブルのNookがマイクロソフトから3億ドルの出資を受けることが合意された。出資のみならず、今後5年間で追加的に3億500万ドルを支払うことも合意されている。

 この出資は、電子書籍市場で生き残るために多額の投資を必要としているバーンズ&ノーブルと、ネットの主流がタブレット型端末とスマホにシフトする中で、それに対応したOSであるWindows 8のアプリ・ストアを充実させたいマイクロソフトの双方にとってメリットがあると言えるが、逆に言えば、それだけ多くのプレイヤーが電子書籍市場を成長市場と考え、そこでの競争が激化しているのである。