人間誰しも美しく生活したいと思っている。それは見た目だけじゃない。中身から美しくということだ。
 それはクルマも同じである。今どきクルマを実用性だけで買う人はいない。だったらトラックやバンでいい。そうではなく、乗る人の身体はもちろん、時には頭や心まで気持ち良くしてくれるから買うのである。それはスタイリングであり、走りであり、質感であり、ブランド性であり、知的興奮を誘うエピソードである。クルマはある意味、五感で味わうプロダクトだ。だから楽しくも難しいのである。
 というわけでこの“ビューティフルカー”では私、小沢が美しさや知的エピソードを中心にクルマを語っていこうと思う。

【コンセプト】トヨタかスバル、どっちが作ろうがどっちでもいい!

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 「なにを言ってるんですか? 開発がスバルだろうが生産が太田工場だろうが、どちらでもいいんですよ。極端な話、ハードは二の次。それよりどういう楽しみ方、遊び方を提示できるかが大切で、そういう意味ではこのクルマは、相変わらずトヨタが作ったと言えば作ったと言えます。ただそうした問題以上に、このクルマからビジネスモデルが変わることが重要です。トヨタ『86』&スバル『BRZ』は今までのように“工場から出た瞬間”に完結するのではなく、“そこから始まる”クルマなんです」

 そう語ったのはトヨタの86担当、多田哲哉チーフエンジニア。これを聞いて、私は今までの疑問が霧のように晴れていくのを感じた。というのもここ数カ月、我らが自動車メディアでは「86、BRZは(トヨタとスバル)どちらが作ったのか?」「走りはどちらがいいのか?」という不毛な論争が繰り返されてきたからだ。

 ソイツは確かに今までの文脈では重要だ。例えばBMWとメルセデスの直6エンジンは、排気量やスペック以上にパワーの出方や回転フィーリング、音質が重要で、それは誰が設計したか、どの工場で作られたかによった。言わば、そのマグロはインド沖で上がったのか? 青森の大間で揚がったのか? などにこだわるような源流主義だ。事実、食材もクルマも産地によってクオリティーは変化し、我々はその源流を特定することで味わいを説明できた。地産地消のスローフード的概念と言ってもいい。

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