成長著しい中国自動車市場では、2010年の販売台数は1800万台を超えました。日本が軽自動車を含めて2010年で500万台弱なので、中国市場はその3倍以上の規模ということになります。世界の自動車メーカーがそこに注目するのは当然ですが、その中国では日本メーカーは今ひとつ元気がありません。その中で一人気を吐いているブランドがあります。それはトヨタでもホンダでもない、何と意外なことに日産なのです。

 トヨタ/レクサスが85万台、ホンダ/アキュラが65万台であるのに対して、日産/インフィニティは102万台を売り上げました。日本車の合計が約330万台なので、日産はその中で30%弱のシェアを持っていることになります。日産の国内シェアが2010年で13%であることを考えると中国での強さが際立っていることが分かると思います。

「GT-Rは神」

 その理由としてさまざまことが考えられますが、その中で「おやっ、なるほど」という記事があったのでそこでの議論を紹介しましょう。それはJBpressというウェブ経済メディアに載った牧野茂雄氏の「『GT-Rは神』と熱弁した中国の自動車雑誌編集者」という2011年9月8日付けの記事です(出展:日本ビジネスプレス・JBpress)。

 そこで著者は、中国市場での日産の人気は、単に品質とか品質対価格といった普通のことから来るものではない、GT-Rという神に値するモデルを持っているからだ、というのです。この記事のその記事のさわりの部分を引用しましょう。

 旧知の中国人ジャーナリストは私にこう言った。「日本車はよくできているけれど、何か一本、筋の通ったところがない。中国人は欠点をあまり気にしない。欠点がないだけでは中国人は大枚をはたかない」

 そう言う彼に「壊れにくいことも魅力でしょう」と反論した。答えはこうだった。

 「壊れにくいという理由で売れるのは、せいぜい35万元(約420万円)までじゃないかな」

 そうかもしれない。中国で日本車が圧倒的人気を誇るカテゴリーは中型セダンであり、日産「ティアナ」、ホンダ「アコード」、トヨタ「カムリ」の3モデルだけで昨年は50万台近く売れた。価格帯は18万~35万元である。ちなみに「アコード」は前年比3%減、「カムリ」は同3%増、「ティアナ」は同30%増だった。

 「ティアナ」の躍進がGT-R効果だけでないことは明らかだが、冒頭のGT-Rファンの彼はこう言った。

 「クルマ好きなら、GT-Rと同じメーカーのクルマを選ぶのが当然です」

 この言葉を全面的に信じる気は毛頭ないが、まったくの推測ではないというデータが実際に存在する。中国人は、決して1人では自動車販売店のショールームを訪れない。信頼できる助言者や隣近所の住人を連れて行く。その人が「近所でも有名なクルマ好き」である可能性はかなり高いのだ。

(出展:日本ビジネスプレス「JBpress」/『「GT-Rは神」と熱弁した中国の自動車雑誌編集者~中国自動車市場の今(1)』)



 つまり、中低価格帯の車を買うときでも「このクルマはあのGT-Rと同じメーカーが作っています」が殺し文句になる。そのときに「あの○○○」を持っていないメーカーは圧倒的に弱い立場に立たされる、という訳なのです。

 「GT-R」というのは、日産が採算を度外視して「世界最高、最速の車を作ろう」と開発した特別なクルマで、日本で800万円強のものが中国では1800万円します。中国のクルマ好きの富裕層の間では、日本車には珍しくフェラーリやポルシェといった世界のトップブランドより高く評価するものも少なくなく、年間100台ほど売れているのです。

日産「GT-R」
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 年間100台しか売れないクルマに徹底的にこだわるだけではまさに採算を度外視したことになりますが、それが一部の目利きの間で日産ブランドの「ご神体」として崇められ、その話が日産車全体の人気を下支えしているとなると、それは日産の商売にとっても大切なご神体になっていると言っていいでしょう。