「天声人語 書き写しノート」210円。見開きの右上に記事の切り抜きを貼り付け、下段の原稿用紙に、603字の記事を一言一句逃さずに書き写す。また、左上には記事の感想や初めて知った言葉や時事ネタなどを自由にメモできる欄もあり、A4版1冊で1カ月分を書き込めるようになっている(画像クリックで拡大)

 朝日新聞のコラム「天声人語」を書き写すための専用ノートが人気を集めている。

 このノートを企画した朝日新聞社の社長室教育事業センター・木之本敬介さんによると、当初は販売の予定は無かったという。しかし、今年3月の子ども向け特集紙面で天声人語の書き写しを勧め、紙面に原稿用紙を入れてこのノートのプレゼント(50冊)を告知したところ、約1900通の応募があった。「プレゼントよりも、有料で売ってほしい」という声が多数寄せられたことから、4月末から販売に踏み切った。プレゼント企画には、子どもだけではなく、年配の親にプレゼントしたいという30代~40代や、受験対策で取り組みたいという中高生、脳や手先を使うトレーニングにやりたいという高齢者など幅広い層から反響があり、中には「20年前からやっていたのでこんなノートを待っていた」という声もあったとか。

 天声人語を書き写すという勉強法は、実は昔から一部の学校などで行われていたらしい。「社内でもかつては“新人記者は天声人語を書き写せ”という教育法がありました」と木之本さん。また、同社が大学生向けに行ったセミナーの中で天声人語の書き写しをしてもらったところ、「面白い!」という声が多かったことも、専用ノートを作るきっかけになったと話す。

 発売後の反響は予想以上に大きかった。当初は、朝日新聞の新聞販売所(ASA)限定で販売をしていたが、5月には東急ハンズ池袋店、6月には東急ハンズ名古屋店から顧客からの問い合わせの多さから取扱いの強い要望があり、7月には東急ハンズ全店で販売を開始。さらに紀伊國屋書店や三省堂といった大手書店や伊東屋などの大手文具店など急速に販路が拡大した結果、発売後4カ月で36万冊を売り上げた。

 店頭の購入者はOLやビジネスパーソンが多く、「久しぶりに文字を手書きする機会ができて良かった。忘れていた漢字を思い出せる」という声も。すでに2冊目、3冊目に突入するリピーターが増えていることや、夏休みの自由研究に取り入れられたことも功を奏した。100冊単位で購入して朝の時間に書き写しに取り組んでいるという中学校や、進学・就職の指導に活用する高校、新人研修に取り入れた企業もあるという。こうした取り組みを取材した特集記事(7月26日)で再びノートのプレゼント(50冊)を告知したところ、今度は約1万9000通の応募があったという。

 朝日新聞社には、ノートの購入者から、「漢字を覚える、ペン習字のお手本になる、話題が増える、頭の体操になるといいことばかり」(50代女性)、「小学生の息子とはまっている」(40代男性)、「子育て、介護に追われる日常で、唯一集中できる大切な習慣」(40代女性)といった声が寄せられている。「専用ノートはマス目があって、最後の1字まで埋める『ゲーム感覚』や達成感で楽しく取り組めるようです。個人のブログで紹介してくれる方も多く、商品が独り歩きし始めたといった感じですね」(木之本さん)。何か手軽に学びたいという方は、一度チャレンジしてみては?

(文/池田明子=フリーエージェント)