提供時間のスピードアップがカギ

 この焼き牛丼を開発したのは、「肉は焼いたほうがうまい、というのが一番の理由。日本でも欧米でも肉は焼いて食べるのが一般的だが、なぜか牛丼は肉を煮るのが当たり前になっている。だったら焼いた牛肉を載せた牛丼があってもいいのでは、と考えた」(三光マーケティングフーズの平林専務)という。

 外食業界で新しさを前面に出したメニューが日々生み出されるなか、焼き牛丼が注目を集めるのは「肉は焼くとうまい」というわかりやすさが大きいだろう。まさに“ありそうでなかった商品”で、逆になぜこれまでなかったのか不思議に思えてくるほどだ。

 「煮る牛丼は数秒で出せるが、焼き牛丼は注文を受けてから焼けるまで3分はかかるし、全員が肉を焼けるように教育しないといけない」(同)。既存の牛丼チェーンが客の回転率を高めて低価格を実現していると考えると、「焼く」という作業は非常に面倒で効率が悪いのだ。

 やはり最も苦労したところは「注文を受けてから焼く前提で、どうやったら早く提供できるか」だったという。オープン当初は提供に10分程度かかって「遅すぎる」とクレームを受けることもあったが、現在は注文を受けてから3~5分程度で提供している。ただ注文してすぐ出てくる大手牛丼チェーンと比べるとその差は歴然で、今後も提供時間のスピードアップを図っていくという。

 ちなみに「焼き牛丼」以外にも、「カレーライス」(350円)「焼肉定食」(480円)があり、から揚げやエビフライといった揚げ物をオプションで選ぶこともできる。「東京チカラめし」という店名の通り、かなり“ガッツリ系”のメニュー構成だ(定食メニューや揚げ物メニューがない店舗もある)。

 ビジネスパーソンの昼食需要が高い都心の駅前からスタートし、地元の商店街や、商業施設のフードコートなど、さまざまな場所にさまざまな規模の店を出店してテストしている状況。現在の「焼き牛丼」人気をみると大手牛丼チェーンの追随もありそうだが、「店員の作業から店の作り方まで、既存の牛丼店とは全くの別物」(同)。仮に商品化したとしても、既存の牛丼と同程度の価格で提供するのは難しいだろう。

 1人で店に入りにくい女性客や職場からあまり離れられない客にも対応するため、テイクアウトを8店舗のうち4店舗で実施中(2011年8月末現在、池袋西口、人形町、綱島、大宮東口)。今後オープンする店では最初から実施できるように準備していきたいという。

いずれの店も席数はそれほど多くなく、昼どきは店の外まで行列ができている状況。ビジネスパーソンは昼の休憩の間に食事をさっと済ませてコーヒー店で一服したいという人も多く、特に都心のビジネス街では提供時間のスピードアップが急務だという
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(文/山下 奉仁=日経トレンディネット)