囲碁普及戦略は若い女性をまず狙う。オトコは二の次

 さて、囲碁の世界に旋風を巻き起こした“仕掛人”は、囲碁のフリーマガジン「碁的」(2008年10月創刊)である。運営母体は、20代から30代の若者への囲碁普及を目的に活動する「IGO AMIGO」(囲碁アミーゴ)という非営利のボランティア団体だ。前出のダイヤモンド囲碁サロンとは交流があり、人的・物的な協力関係にあるとのこと。急増する囲碁ガールの現況について、碁的のプロデューサー兼IGO AMIGOのディレクターを務める松原独歩さんに話を聞いた。

囲碁フリーマガジン「碁的」のプロデューサーで、かつ運営母体である「IGO AMIGO」のディレクターを務める松原独歩氏。本業は建築家。3~4年前、映画「茶の味」を観たのをきっかけに、それまで全く興味のなかった囲碁にハマったとのこと。棋力は初段(画像クリックで拡大)

 統計によると国内の囲碁人口は50代~60代の男性に偏り、10代はマンガ「ヒカルの碁」の影響で多少興じる子もいるが、20代~30代はゼロに近いほど少ないらしい。IGO AMIGOはこの現状を打開すべく、囲碁界のマドンナ・吉原(当時梅沢)由香里五段が仲間2人と発足した小さな会を前身に、2006年4月に正式に活動をスタート。活動は、入門者から級位者を対象にした月2回のワークショップ(※1)を基本に、2007年からは年1回の囲碁の祭典「IGO FESTIVAL」(※2)などのスペシャルイベントも開催。囲碁の魅力と楽しさを若者たちに伝えている。

(※1)日本棋院(東京・市ヶ谷)や、いずみ囲碁ジャパン(東京・八重洲)で、毎回80人~100人の参加者が集う。この5年間に150回以上のワークショップを開催、のべ1万人以上が参加した
(※2)囲碁フェスティバルは池袋サンシャインや六本木ヒルズを会場に、毎回平均して3000人以上の来場者を集める

 若い世代への囲碁の普及を目的とするIGO AMIGOだが、その大きな特徴は、囲碁フェスで公開対局する女流棋聖戦「妙花」(みょうか)を立ち上げるなど、囲碁アピールを「若い女性にフォーカスしている」(松原さん)点だ。

 「20代後半~30代前半の女性はトレンドメーカーで、最初に囲碁の面白さをつかむだろうし、囲碁グッズもかわいらしくアレンジしたり、カフェで打ち始めたりと情報発信能力に長けている。会場に女性がたくさんいると、たぶん男性も来てくれる。彼女たちの力に期待して、男性は二の次という順番です(笑)」(同)

オヤジギャルを取り込む「競馬」を見習った

 というのも、若い女性を取り込むのに「競馬を見習った」というのだ。

 「オヤジギャルを競馬場へ動員するイメージ戦略を、僕たちもヒントにしたんです。競馬と囲碁の状況はたぶん似ている。碁会所も男性ばかりで、プカプカ煙草を吸ってグレーな感じの場所ですし(笑)」(同)

 大井競馬場で始まった日本初のナイター競馬を「トゥインクルレース」と名づけた競馬界(1986年)。馬とキラキラはなんの関係もないが、競馬新聞を手にチビた赤鉛筆を耳にはさんだオヤジのたまり場、といったダーティーな競馬場のイメージを一新。明るく楽しいイメージを打ち出し、バブル時代には「女性が競馬観戦をする」のがオシャレとされ、大井競馬はデートスポットとして突如脚光を浴びた。

 で、案の定うまくいったのか? というと、「いや、最初の3年間は女性参加者が目立って増えるような効果は表れなかったんです」(同)。それを一瞬で変えたのがコレだった。

■変更履歴
本文中で吉原由香里五段の名前を誤って表記していました。該当箇所は修正いたしました。お詫びして訂正いたします。[2011/08/25 17:45]