梅雨明けが目前に迫り、いよいよ「節電待ったなし」の夏本番がやってきた。家庭内の消費電力のうち大きな要素となっているエアコンを、上手に節電して使うためにも、エアコンがどのような仕組みで動き、どういった部分で電力を消費しているのかを抑えておきたい。

 実は最近のエアコンにはさまざまな省エネ技術が盛り込まれている。節電を追い続ける最先端の開発現場のプロに、テクノロジーの進歩を聞いた。

圧縮機の構造を変えて
物理的な効率を上げた

 エアコンは「ヒートポンプ」によって、室内の空気を冷やしたり、温めたりしている。このヒートポンプは、冷媒と空気の間で熱をやり取りさせる「熱交換器」、冷媒を圧縮するための「圧縮機」、圧縮機を動かす「モーター」、そして、モーターを効率的に動かすための「インバーター」の4つから成る。

 ヒートポンプは、モーターで圧縮機を稼働し、室内から室外へと熱(ヒート)をポンプのように汲み上げ、排出することで、室内の空気を冷やす。(「ヒートポンプの仕組み」は前回の記事を参照)

 よって、圧縮機の効率を上げれば、モーターの負担は下がるので、消費電力も減る。実は、エアコンの消費電力のうち、最大で89%がこの圧縮機で消費されているという。

エアコンの消費電力分布

(画像クリックで拡大)

 圧縮機の性能はどんな技術の進歩によって高められたのか。それを知るためには、まず、圧縮機の仕組みについて知る必要がある。圧縮機にはいくつかの種類があるが、ここでは、エアコンに使われる代表的なタイプの1つ「ロータリー圧縮機」を取り上げる。

 ロータリー圧縮機の内部は円形の空間になっている。その中に、一回り小さな筒であるローラがある。このローラには「ベーン」と呼ばれる“仕切り”が強く押し付けられている。ベーンの右側には「吸入口」、左側には「排出口」がある。

 モーターにより、圧縮機の内壁に密着した状態でローラを回転させると、冷媒は圧縮機の中に吸入され、圧縮され、圧縮機の外に排出されるのである。

ダイキン工業堺製作所環境技術研究所開発グループの古庄和宏主任研究員

 「この圧縮機の性能を決める要素として『機械効率』と『容積効率』があります」。圧縮機の設計に携わるダイキン工業株式会社堺製作所環境技術研究所開発グループの古庄和宏主任研究員が説明してくれた。

 ローラが回転するとき、ベーンとの接触部分で摩擦が起こる。摩擦は損失となり圧縮機の電力を増加させる。

 これが「機械効率の低下」となる。

 一方、圧縮されてゆく冷媒がローラとベーンの接触部から漏れ出せば、冷媒の循環量が下がってしまう。

 これが「容積効率の低下」である。

 「これら2つの効率を上げるために開発し、1995年からダイキンのエアコンに採用しているのが『スイング圧縮機』です」(古庄主任研究員)。

ダイキンの「スイング圧縮機」と従来の「ロータリー圧縮機」を比較する模型

 スイング圧縮機では、ベーンが圧縮機に接する部分を可動式にすることで、ローラとベーンの一体化を実現した。

 「ベーンとローラのつなぎ目をなくすことで、ローラとベーンの摩擦も、ローラとベーンのすき間からの冷媒の漏れもなくなります。その結果、ローラとベーンの接点で発生していた損失をなくし、“機械効率と容積効率“を向上させることができました」(古庄主任研究員)。

 このスイング圧縮機の採用で圧縮機の性能が高められ、モーターの負担が軽くなり、消費電力の低減につながったのである。