「三洋電機」のヒット商品と、それを生み出してきた開発者や企画者たち、そして三洋電機というブランドの“履歴書”を、まとめていく連載「洗濯機」編。「人間洗濯機」まで生んだ三洋電機の洗濯機事業は、21世紀に入り、「洗剤ゼロコース」を採用した洗濯機まで生んだ。

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 三洋電機が、2001年に投入した「洗剤ゼロコース」を採用した洗濯機は、同社の洗濯機事業の歴史のなかでも、大きな反響を呼んだ製品のひとつだろう。だが、この製品の開発は、思わぬ一言からスタートしている。

 洗剤を使わないという洗濯機の常識を覆す製品が生まれる背景にあったのは、当時の家電営業部門の部長が新製品検討会議の席上でもらした「洗剤を使わない洗濯機は作れないか」という言葉だった。技術的な根拠も、市場性に関するデータがまったくないなかで、つぶやくように部長がもらした、洗濯機の製品企画としては常識外の言葉に、当然のことながら出席者は驚いた。しかし、それでも社内にはこれを真剣に捉える風土があった。

 「おもしろいやんか」

 その一言に反応するように、洗剤を使わない洗濯機が真剣に議論されはじめたのだ。当時、三洋電機の家電事業部門に勢いがあったことも背景にはあっただろうが、自由な発想で発言しあえる土壌があったこと、営業担当部門と技術部門とがいい意味で切磋琢磨する環境が作られていたことも見逃せない。

 では、なぜ技術的背景や、市場性というデータがないのにもかかわらず、こうした提案が行われたのか。

 実はそこには、営業部長の「勘」ともいえるものがあった。