空想の恋愛ストーリーがトレンドに

 元々ケータイ小説は、「魔法のiらんど」「野いちご」「E★エブリスタ」などの携帯電話向けWebサービス上で執筆されるものであり、読者とコミュニケーションをとりながら作品を完成させていくという点に大きな特徴がある。この傾向は現在も大きく変わっていないが、そこで執筆される作品、そして作家の傾向に関しては大きく変化している部分がある。

 冒頭で説明した通り、かつてケータイ小説の人気作といえば、実話をもとにした若年女性にとってリアリティのあるもので、内容もハードで泣けるものが多くを占めていた。だが現在の人気ケータイ小説作品の動向を見ると、その傾向はかなり異なっている。

 というのも、ケータイ小説サイトで現在人気となっているものは、「平凡な女性がある日突然、イケメンの強い男性にモテまくる」という恋愛ストーリーが多くを占めているからだ。舞台は学校を中心とした現実社会であることが多いが、時折恋の波乱をはらみつつ、最終的にはハッピーエンドで恋が成就するというケースが大半。かつてのようなハードな展開を見せるものは少なく、空想主体の甘い恋愛ストーリーに人気が移っているといえよう。

 また、作家の側も、体験談をつづりたいという人だけでなく、最初から小説を書きたくてケータイ小説を書いている人が増えてきているようだ。例えば、毎日新聞社やスターツ出版が主催した「第5回ケータイ小説大賞」で大賞を受賞した櫻井千姫さんは、授賞式会場でいじめをテーマとした作品を執筆しながらも、自身にそうした経験がある訳ではないと話している。また彼女は毎日小説を執筆して修行している旨の話もしており、元々小説家を志している印象を受けた。

 こうした傾向の変化には、「ハードなストーリーに読者が疲れてしまった」「リアルな内容を求める層はケータイブログに移行した」など、諸説の要因があるようだ。だが作品数的に見ると、実話ベースの作品が減少している訳ではないようだ。ブームでケータイ小説の存在を知ったことで、最初から小説を書くことを目的とした人が入り込み、若年女性が好む恋愛ストーリーを執筆したいという人が大幅に増えたことから、傾向の変化につながったといえそうだ。

「第5回ケータイ小説大賞」の応募総数は、第1回の5倍にのぼっているとのこと。大賞を受賞した櫻井千姫さんは、授賞式でも小説家を目指している旨の発言をしている(画像クリックで拡大)