私が京都の開化堂の茶筒と出会ったのは、セレクトショップ「ユナイテッドアローズ」原宿店の地下にあり、生活雑貨を提案しているコーナー「スタイル フォー リビング」でのことだった。最初、目にした時は、京都の老舗ブランドとも知らず「何て美しい茶筒なのだろう」と感じたのだ。

 そこで「ユナイテッドアローズ」のバイヤーを務める安藤桃代さんの説明を聞いて、職人技によって一つひとつ手作りされたものであり、実に緻密(ちみつ)に作られたものであることを教えてもらった。すっかり心が動き、何かの折に、是非、取材したいと思っていたのである。

 その願いがようやくかない、京都に話を聞きに行った。お会いしたのは、六代目を担う八木隆裕さん。まだ30代ながら、前述した「ユナイテッドアローズ」をはじめ、新しい販売先を開拓したり、海外の展示会に出展したりして、新しい市場を切り開くため、果敢な挑戦を続けているのだ。

通りから一本入ったところにある、静かな佇まいのショップ(画像クリックで拡大)

140年にも及ぶ歴史を持った職人技

 開化堂の創業は1875年(明治8年)に遡る。明治の初めの文明開化の時代に、英国から輸入されたブリキを使った缶作りを始めたのがきっかけだった。当初から、職人の精巧な技によって、一つひとつ手作りすることを身上としてきた。

 ブリキの板を寸法に合わせて断裁するところから始まって、1日に作ることができる数は、10個前後だという。約130もの細かい工程を踏んで、一つの茶筒はできあがっていく。熟練した職人の手をしてその数ということが、手間隙のかかるもの作りであることを実証している。

 開化堂の茶筒は、蓋を手できっちり閉めなくても、筒の口に合わせるだけで、後はすっと収まっていく。それは、本体と蓋の寸法をちょうどいい具合に、実に緻密(ちみつ)に合わせる、職人技ならではのこと。絶妙な“あんばい”に仕上がっているのは、機械ではなく高度な技を持った手が生み出しているからなのだとふに落ちた。

上品でモダンな雰囲気のインテリアでまとまっているショップ内(画像クリックで拡大)