アップルとグーグルが電子書籍サービスの一つである、ネット上での雑誌の定期購読を始めた。その詳細をみると、少数のネット企業がコンテンツの流通を独占するネットの現実がよく分かるのではないだろうか。

アップルが提示した厳しい条件

 米国では、昨年iPadが発売されて以来、アップルはアプリや電子書籍といったコンテンツの有料販売を急速に伸ばしている。グーグルも、アンドロイド端末上のアンドロイド・マーケットや、電子書店グーグル・エディションを展開してそれに追随している。

だが両者とも、これまで雑誌や新聞の電子版の定期購読のサービスは提供してこなかった。様々な理由があるのだろうが、雑誌を一冊単位でアプリとして発売するだけだったのである。

 しかし、2月15日にアップルが定期購読サービスの提供を始めた。その翌日には、グーグルも同様に定期購読サービスの開始を発表した。出版社にとって雑誌の定期購読は重要な収入源であるので、待ちに待ったサービスが始まったと言えるであろう。しかし、その取引条件を見ると、ネット上でのコンテンツの流通独占を奪われた悲哀を感じざるを得ない。

アップルのiPadは、まもなく次世代機が発売されると見られている(画像クリックで拡大)

 まず、アップルが定期購読サービスを利用する出版社側に提示した条件は、かなり厳しい。売上の30%を取るというのは、電子書籍で標準的な慣行になっているのである程度やむを得ないであろう。しかし、それに加えて、まずiTunes Store上で雑誌・新聞の定期購読を提供する場合、他のウェブサイトやマーケット上で提供する価格をそれよりも安くしてはいけない、という条件を課している。

 それに加え、アップルは、定期購読を申し込んだユーザ情報(氏名、メールアドレスなど)を、“ユーザの明示的な同意があった場合に限り”出版社側に提供する、としている。

 ユーザ情報はネット広告の主流であるターゲティング広告に不可欠であり、広告収入を増大させるための“宝の山”である。特に雑誌や新聞のように、購読料収入よりも広告収入が多い媒体については尚更である。

 しかし、アップルなどのネット企業は、電子書籍の購入者のユーザ情報については、出版社側が提供を強く求めるのに対して頑に拒んできた。それを考えると、雑誌や新聞については多少は譲歩したとも言えるが、「出版社にあなたの個人情報を提供しても良いですか?」と明示的に聞かれて許諾するユーザはそう多くないであろうことを考えると、そう大きな譲歩とも言えない。

 こうした条件から、iTunes Storeと専用端末(iPad、iPhone)でアップル経済圏とも言うべき流通システムを確立したアップルは、そこでコンテンツを売ろうとする出版社の側に対して、かなり厳しい態度に出ていることが分かる。シェアを獲得した大手スーパーマーケットが、そこに商品を納入する業者に対して厳しい条件を課すのと同じなのである。