元「広告批評」編集長・河尻亨一氏が、消費者の心を巧みにつかむヒットメーカーたちのコトバから、時代の“ツボ”を探る。

ヒットで大切なことはバラエティで学んだ

 『人生で大切なことは全部フジテレビで学んだ』という書籍がある。

 筆者は吉田正樹氏。かつてフジテレビのディレクター、プロデューサーとして、『夢で逢えたら』『ウッチャンナンチャンのやるならやらねば』『笑う犬の生活』『トリビアの泉』『爆笑レッドカーペット』等のヒット番組を手がけ、90年代以降のテレビ界を牽引した一人である。

 本書の中で吉田さんは、新米時代にADとして参加した『オレたちひょうきん族』や『森田一義アワー 笑っていいとも』をはじめ、自ら携わった番組に関わるエピソードを赤裸々と言っていいほどストレートにつづっている。そこに描かれているのは、人気番組誕生の裏にある人間くさい世界だ。大会社の人間関係やタレントとの交流、挫折などを描いた自伝的読み物として面白い。

 1月8日に急逝した横澤彪氏(吉田さんが師と仰ぐ元フジテレビプロデューサー。『ひょうきん族』『いいとも』などを立ち上げた)やウッチャンナンチャンの内村光良氏との本音トークも収録されるなど、読み応えのある一冊である。

 しかし、それだけではない。本書は「制作チーム論」「現代メディア論」としても興味深く読める。それは筆者の一歩引いた客観的なものの見方とウケる番組を作りたいという情熱、サービス精神による部分が大きいだろう。著者による別著『怒る企画術!』もそうだが、「ヒットの教科書」という視点で読んでも参考になる部分が多い。

 吉田さんは2009年にフジテレビを退社した。その理由は、この本によれば「フロンティアの喪失」だという。いまのテレビ業界への危機感が、次なる行動に駆り立てたのかもしれない。そして吉田氏は今後、「テレビ局の外側から、テレビはもちろん映画やラジオ、インターネットなど、あらゆるメディアを視野に入れたコンテンツを作っていく」という。新たなフロンティアにおけるヒットコンテンツとはどういうものだろう。

 吉田さんは2010年末にリニューアルオープンしたネスレの公式サイト「ネスレアミューズ」内で、「いつもココロに太陽を」というバラエティ番組(週1回配信/2011年1月13日スタート)を手がけている。まず、その話から聞いてみたい。

吉田正樹(よしだ まさき)
1959年8月13日生まれ、兵庫県姫路市出身。兵庫県立姫路西高等学校、東京大学法学部卒業。1983年にフジテレビ入社以来、主にバラエティ番組のディレクションとプロデュースを担当。携わった主な番組は、『夢で逢えたら』『ウッチャンナンチャンのやるならやらねば!』『笑う犬の生活-YARANEVA!』『トリビアの泉』『爆笑レッドカーペット』『爆笑レッドシアター』など。
 また、2005年にはフジテレビとSBIインベストメントが共同で設立した「SBIビービー・メディアファンド」の運用に関わる。2006年にはデジタルコンテンツ局デジタル企画室兼務となり、放送と通信の連携プロジェクトにおいて『アイドリング!!!』などを手がける。2009年1月1日にフジテレビを退職し、吉田正樹事務所を設立、およびワタナベエンターテインメント会長に就任。
 現在は、KLab取締役、ギガ・メディア社外取締役、SBIホールディングス非常勤取締役、ディー・エル・イー顧問、NPO放送批評懇談会選奨委員を務め、各種メディアに関するコンサルティング活動を行っている。

(写真/稲垣純也)