「手帳まで自分で作ったら負けだって、そう思います」

高畑:だから、神様に対する考え方が違いますよね。「フランクリン・プランナー」の方は、自分で目標を立てているじゃないですか。一方、何々先生の何とか手帳にあやかるというのは、その人の生き方に心酔しているところがあるから。

舘神:ただ、それも複雑で、誰々さんが作った手帳は、作った誰々さんにとっての理想の手帳なんです。例えば、ここにいる高畑さんが作った「文具王手帳」(註4)は、文具王にとっての理想を具現化したものだし、野口悠紀雄の理想は「『超』整理手帳」だし、あと「知的生産手帳」(註5)とかね、佐々木かをりの「アクションプランナー」(註6)とか、佐久間氏の「ジブン手帳」(註7)とか枚挙にいとまがありませんけれども。それぞれご自分にとってこれがベストだっていう手帳のはずなんですよ。

 中には適当に名前だけついちゃったヤツはありますけど、それを抜かせば、彼らの名前をかぶされた手帳っていうのは、その有名人にとってベストな形の手帳。

納富:文具王手帳だけちょっと違うんだけどね。文具王はリフィル(註8)を作ってないから。リフィルは使う人が自分で調達する。

高畑:その有名人と似たような目標を持っている人にとっては、実際に使い勝手がよかったりするかもしれない。

註4 【文具王手帳】:文具王・高畑正幸氏が長年温めていたシステム手帳用カバーのアイディアを製品化した物。バイブルサイズのバインダーがA4サイズの用紙を四つ折りして収納出来るカバーに装着されている。表紙の片面は面ファスナーになっているなど、細部まで文具王のアイディアが活かされている。
註5 【知的生産手帳】:久恒啓一による一日半ページのバーティカル型(縦型)手帳。タスク管理と時間管理を一覧出来るレイアウトが特徴。
註6 【アクションプランナー】:佐々木かをり氏による、働く女性のための時間管理術を手帳化した「行動計画帳」。ハッピーになる、をテーマに作られている。人名を冠した手帳の中では老舗。
註7 【ジブン手帳】:博報堂勤務で文具王の同級生でもある佐久間英彰氏による、一週間見開きバーティカル型の手帳。ほぼ日手帳でもお馴染の手帳用紙トモエリバーを使い、全ページをカラー印刷するなど、こだわりの仕様。一年間のスケジュール管理を行う「一年帳」、人生の設計を行う「人生手帳」、メモ帳の「アイディア帳」の三冊から構成される。
註8 【リフィル】:手帳の中身の事。綴じ手帳の中身から、システム手帳の構成用紙、メモ帳などまで総称してリフィルと呼ぶ。

舘神氏の知人が自作した手帳。1日が朝4時から始まり、朝の4時で終わるフォーマット(画像クリックで拡大)

舘神:似たようなワークスタイルを持っていればね。そういえば、実は有名人じゃなくても手帳を作っているんです。例えば、ここに僕の奥さんの友達が作っている、24時間の見開き一週間バーチカルの手帳がありますが、朝の4時から始まって、朝の4時で終わるという、非常に特殊なフォーマットなんです。で、これがヴィトンのケースに入るように作られているんですって。そういう「自分に特化した手帳」は、神社系手帳と実は変わらないんですよ。流通部分だけが違ってる。

納富:それを言い出すと、本当はみんながみんなリフィルを作った方がいいという話になりそうですけど、そうでもないんですよね。

高畑正幸(たかばたけ・まさゆき)。TVチャンピオン「全国文房具通選手権」(テレビ東京系)で3連覇中で、「文具王」の異名を持つ。現在は文具メーカーに勤務。日経トレンディネットで「文具王・高畑正幸の最新文具ワンダーランド」を連載中

舘神:知人に、手帳まで自分で作ったら負けだって言ってる人がいて、それはそうだと思う。手帳って、目的としては時間を有効に使う為のものじゃないですか。ところが手帳を作るって、ものすごく時間がかかるんですよ。

高畑:手帳の会で集まっている人の中で、すごい緻密な手帳を作ってる人がいたんです。完成度も高くて。「凄いですね、手間がかかったでしょう」って言ったら、「いや、引退してやること無いから手帳を作るのはいくらでも時間が掛けられるんだよ」って答えが帰ってきた。その本末転倒っぷりが何だか残念でした。

舘神:その人にとっては手帳を作ることがミッションなんですよ。

納富:趣味ならそれでありはありなんだけど、自分が使う為の手帳じゃないかもしれなくなっちゃってるのは悲しいですね。

高畑:ユーザーにとって、今年から発売されたような新しい手帳って難しいんですよ。僕の「文具王手帳」は、カバーだけで中身は作ってないから、一回作れば毎年売れますけど、普通の手帳はそうじゃない。新しい手帳を作っちゃったら、責任として、「来年作ってくれんのかよ」っていう声に応える責任が発生するんですよ。