今年は日本でも電子書籍が大ブームとなった。これまで日本で発売されている電子書籍端末はアップルのiPadしかなかったが、来月にはシャープのガラパゴスなどの国産端末も発売され、更に電子書籍が盛り上がりそうである。しかし、巷での電子書籍に関する議論を見ていると、肝心なことが置き去りにされているように感じる。それは、ビジネスモデルの観点と出版文化の観点である。

iPdaの登場を機に、日本でも電子書籍市場の拡大が加速している(画像クリックで拡大)

ビジネスモデルなき提携の動き

 今年は、iPadの発売の前後から、電子書籍の関連で様々な企業の提携などの動きが起きた。大手出版社、通信事業者、家電メーカーなどが電子書籍の盛り上がりに出遅れまいとしているのがよく分かる。

 しかし、これらの動きの多くが、電子書籍ビジネスを早急に立ち上げるというよりも、電子書籍市場における陣取り合戦の色彩が強いように感じる。電子書籍が盛り上がるのは大いに結構なことなのだが、まだ陣取り合戦に奔走するだけで、具体的なビジネスモデルやバリューチェーンがまだ見えないという点は心配になる。

 電子書籍も、ネットという流通経路を活用して書籍というコンテンツをユーザーに届けるという点では、しょせんはネット・ビジネスの一類型に過ぎない。ネット・ビジネスの現実は厳しく、すべてのプレイヤーが儲かるとは限らない。

 むしろ今はまだ、ネット上のプラットフォーム・レイヤーでシェアを獲得した一部のネット企業だけが勝ち組となる構造と言っても過言ではない。特に、グローバルなスケールでシェアを獲得した一部の米国ネット企業の一人勝ちし、コンテンツは搾取の対象となっているのが現実である。

 そして、電子書籍もその例外ではないのであることを考えると、電子書籍端末のバリエーションが増えて電子書店の数も増えればそれでめでたしめでたしとは言えない。というのは、電子書籍でも来年から米国ネット企業が本格的に襲来するかもしれないからである。

 米国では、電子書籍端末と電子書店の両方でアップルとアマゾンが中心的な存在となっている。日本では、アップルはiPadこそ発売したが、電子書店iBook storeはまだ開設していない。アマゾンは、日本ではまだ電子書籍端末(キンドル)も発売していないし、電子書店(キンドル・ストア)も開設していない。

 しかし、いずれ両者とも日本での電子書籍ビジネスを本格化させるであろう。米国で確立された、電子書籍端末と電子書店が一体となって電子書籍の流通をコントロールする垂直統合モデルを引っ提げて、これから日本の電子書籍市場に本格的に進出してくる可能性が高いのである。

 その段階で、日本の企業がアップルやアマゾンと互角に勝負できる位のビジネスモデルやバリューチェーンを確立できていないと、日本の電子書籍市場はこの二大巨頭に席巻されてしまうことになりかねない。