“ギャル演歌”とは何か?

 “ギャル演歌”という言葉をご存知だろうか。

 関西学院大学准教授の鈴木謙介氏が名付けたジャンルで、「加藤ミリヤを筆頭に、YU-A、西野カナが代表。ギャルの支持が熱いアーティストが歌う、辛いことや悲しいこととどう向き合うかをとうとうと語る歌」(鈴木氏)だという。

 さらに鈴木氏は、「歌詞のシチュエーションはさまざまだが、『内向的で依存心が強くウジウジしているけど、本当は素直になりたい。でもそれが叶わないからがんばって一人でも前向きに生きるんだ』というパターンが多い。男性に対して『嫌われたくない』『こんな自分が嫌い』と言いながら、『いつまでも思って待っています』というのは、演歌のフォーマット」という。

ギャル度が高ければ高いほど“ギャル演歌”を代表する歌手の人気が高いことが分かる(電通ギャルラボ「ギャルまるわかり調査2010」より)

 とはいえ、さすがに演歌的な歌詞そのものがウケているというわけではない。「辛い恋愛」「待ってしまう女」という状況設定は同じでも、ギャル演歌と演歌の歌詞の違いは、“そんな恋愛も、成長への糧。すべては私が成長するためのストーリー”というポジティブさにある。「トラウマ克服」の話に対する共感性が高いギャル向きの音楽なのだ。

ギャル演歌とケータイ小説は似ている!?

 また、ギャル演歌の歌詞はケータイ小説の文体によく似ているという特徴もある。携帯電話で書かれたケータイ小説は、紙に印刷された小説とは内容や文法も異なっている。その特徴を、ざっと4点挙げるならば、

1、1文が短く、改行が多い
2、報われない恋愛モノが大ヒット
3、状況描写があまりなく、もっぱら主人公の目線で心の動きでつづられる
4、書き手と読み手の距離が近いことから、同世代の感覚でわかる

 ギャル演歌は歌い手自身がシンガーソングライターとして作詞しているものが多いが、なかにはケータイで作詞しているアーティストもいる。その“ケータイ文法”が、同年代の友達から恋愛の悩みをメールやブログ、SNSでやりとりする感覚に近いのかもしれない。

 ケータイでギャル演歌を聴く感覚は、友達とのメールのやり取りに近いのではないだろうか。女友達から「彼のことが分からなくて、自信が持てなくて悩んでいるの」というメールをもらい、「あ~私もそんなことがあったよ!」「でも、がんばろう。きっと大丈夫」などとお互いを励まし合う感覚に近い。

 メールは時間や場所を気にしないので居場所をいちいち具体的に描写したりはしないし、リアルタイムのやり取りではないのでいきなり過去の恋愛を振り返った現在の心境をつらつらと述べてもいい。

 ギャルにとって、ケータイ、音楽、ブログ、メールは日常生活に寄り添う存在。「泣ける!」という評判の楽曲も、家で孤独に浸って聴きたい“泣き歌”というより、女友達と励まし合う感覚に近いところがウケているのではないだろうか。