AVC(オーディオ、ビジュアル、コミュニケーション)技術の深部に迫る不定期連載の「AVC技術見聞録」。第1回目は、数十年来テレビの常識とされてきた「3原色」に一石を投じたシャープのテレビパネル技術「4原色技術 クアトロン」にフォーカスを当てたい。

 後編はクアトロンパネルを採用した「AQUOS クアトロンシリーズ」の絵作りに焦点を当てていきたい。

画質と省エネのバランスを評価して絵作りに生かす

増田: AQUOSクアトロンシリーズは、RGB(赤・緑・青)にY(黄色)が加わることで、より高度な色の制御が必要になりました。映像回路ではどのように処理されているのでしょうか。

シャープ AVシステム開発本部 要素技術開発センター 第二開発部 副参事  小池晃氏(画像クリックで拡大)

小池氏: この色が要求されたらこの色画素の組み合わせを使え、というルックアップテーブル(あらかじめ設定された定義)による制御を用いています。それと同時に、リアルタイムで各画素を解析し、両方の機能で色画素の最適な組み合わせを決定しています。

増田: お話を聞いていると「省エネで効率の良い高画質化」がクアトロンのテーマと思えますが、省エネと高画質を両立させることは難しかったのではないでしょうか。

藤根氏: 色域を広げれば色の再現力は高まりますが、電力も増えてしまいます。どこまで色を拡張するか、原色を色度図のどの位置に置くか。こうした判断には省エネ性能も加味しました。クアトロンでは画素の配列やサイズも新たに設計する必要がありました。今までの液晶ではRGB各色画素のサイズが同じですが、クアトロンではRGB+Yの画素の大きさが異なります。これらの最適な割合を決める時も、画質と省エネとのバランスに配慮しています。

シャープ AVシステム開発本部 商品開発センター 第一開発室 副参事 工学博士 藤根俊之氏(画像クリックで拡大)

増田: クアトロンのデモを見ると、金管楽器やひまわりの花などは濃厚で鮮やかに見えます。しかし肌色などの中間色が濃くなって不自然になってしまうという心配はないのでしょうか?

藤根氏: 金属や金箔、ひまわりなどの濃い黄色の場合は、今までよりも色を濃く表現します。このため、いままでのハイビジョン放送では出せなかった豊かな色再現が可能です。おっしゃるように、このままだと人の肌色も濃くなってしまうので、薄い黄色の場合は強調をしないように自然な色濃度に自動調整しています。専門的に申しますと、RGB液晶では各画素がリニアに近い特性カーブを持っていますが、クアトロンでは、黄色の特性をノンリニアにしています。

従来モデル「LED AQUOS LXシリーズ」(写真左)に比べて金色の表現力が大幅に向上した(画像クリックで拡大)

エメラルドグリーンなどの表現力も向上している(画像クリックで拡大)