鎌倉の「引き算の庭」に導いた造景の狙いとは?

平地から山道に入り、かなり段数のある階段を上った先に瑞泉寺はあった。みんながしびれるような庭を期待しながら、豊造一行は階段を登っていった
【撮影データ】
キヤノンEOS-1D Mark IV、レンズ:キヤノンEF16-35mm F2.8L USM 、シャッタースピード:1/160秒、絞り:f4、ホワイトバランス:オート、ISO感度:3200
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 平地から山道に入り、かなり段数のある階段を上った先に瑞泉寺はあった。

 この「“豊造”のデジカメジャーニー『写真の庭』」も、今回でいったん“くぎり”をつけることとなり、庭についても一つの終着点を見出す必要が生じた。どこがいいかという話になったとき、造景はまたなにやら難しい言葉を使って説明し始めたのだが、僕たちの理解を超えていた。だったら難しい話は一切なしに、一応しめくくるという前提で、造景の薦める近場の庭に行こうということになった。それが鎌倉にある瑞泉寺というお寺の庭園だった。

 階段を登りきり、立派な門をくぐると、お寺があった。しかし、目前に広がる庭園は、ごく普通の庭園で、お寺の庭ってこんなんだよねと誰もが納得するような庭だった。右手に「手ぼうき」という、竹ぼうきの先端部だけで作ったようなほうきを持った造景は、まるで柴犬が尾を振りながら先頭を行くように、その手ぼうきを左右に振りながらずんずんと庭の奥へと進んだ。

一本脇の道の階段は、微妙に傾いた箇所もありながら、完全に苔むしていた(画像クリックで拡大)

門をくぐった左側には、立派な鐘が釣り下がっていた(画像クリックで拡大)

 このお寺の住職の大下一真さんにいろいろとお話をうがってから、その造景がボクたちに見せたいという庭を見に行った。その庭は、お寺の背部にあり、許可なく入れないようになっていた。住職の許可を得ていたボクたちは、その庭の中へと入っていった。

 庭は、実に不思議な空間だった。よくあるような「灯篭(とうろう)」や「つくばい」、そして庭石というものが一切ないのだ。殺風景であるばかりでなく、中央にごく浅い池があるのと、奥の壁に洞穴があるのとで、全く飾り気のない、素朴すぎるぐらいの庭だった。

 何もない、「引き算の庭」。引き算しすぎて無になったような庭。島根の足立美術館で見た庭のような立派な庭を期待していた僕たちは少しばかり拍子抜けした。事の次第を一人理解している造景だけがにやにやしているという、妙な雰囲気が今回の豊造一行に流れていたのだ。

瑞泉寺の奥には、何も飾り気のない庭が広がっていた。造景はにたにたとしていたのだが、一体何をたくらんでいるのだろう。「引き算の庭」と称されるこの庭だが、一体それは何を意味するのだろうか?
【撮影データ】
キヤノンEOS-1D Mark IV、レンズ:キヤノンEF16-35mm F2.8L USM 、シャッタースピード:1/160秒、絞り:f4、ホワイトバランス:オート、ISO感度:3200
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