宍道湖のシジミ漁の漁船をノスタルジックに

国道431号線を松江から出雲に向かう途中、小さな入り江を利用したシジミ漁の漁船が格納された小屋を見つけた。カラーで撮影したものをモノクロ化してみた。色のある生々しい世界よりも、なにかノスタルジック的な表現の方がいいと判断し、さらにセピア調にしてみた。自分の感性をいかようにも表現できるデジタルは、クリエーターにとって最大の武器となる
【撮影データ】
キヤノンEOS 5D markII、レンズ:キヤノンEF70-200mm F2.8L USM IS、シャッタースピード:1/3200秒、絞り:f4.5、ホワイトバランス:オート、ISO感度:800、RAWデータで撮影したものをカメラに同梱されている現像ソフトDigitalPhotoProfessionalにてモノクロ化およびセピア化
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 宍道湖と言えばシジミ。いまやシジミは、アルニチンという肝機能を高める成分の食べ物として注目を集めている。その宍道湖湖畔に行ってみたのだが、強い風で波立ち、とても湖とは思えないような波が立っていた。豊造一行としては、シジミ漁師を訪ね、実際のシジミ漁を体験したい気持ちでいっぱいだったのだが、湖が荒れていたことと、日程の関係で断念せざるを得なかった。

 宍道湖沿いに国道431号線をクルマで松江から出雲に向かって走らせていたとき、こじんまりとした入り江に、あきらかにシジミ採りの船であるという船が何隻か浮かんでいるのを見つけた。話を聞こうと近くにある家を訪ねたのだが、残念ながらお留守。仕方なく船と船の格納される小屋を写真に収めさせてもらった。

海底にいるシジミを掘るための漁具を見つけた
【撮影データ】
キヤノンEOS 5D markII、レンズ:キヤノンEF14mm F2.8L USM 、シャッタースピード:1/1600秒、絞り:f6.3、ホワイトバランス:オート、ISO感度:800
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 シジミというのは、ご存知のとおり二枚貝。砂泥の湖底に生息する。湖底と行っても、シジミが好んで棲むのは汽水域といって、海水と淡水とが混じり合う水域。なぜか、塩水とも真水ともつかない場所を好む生き物は少なくない。魚ではスズキやクロダイ、ボラなどがそうであり、海に住んでいながらほぼ真水にまで対応する順応力の強さを見せる。

 ただここには、人知れぬたいへんな物理的な障害が実は起きている。海水と淡水で違うもの。それは単純にいえば塩分があるかないかの違いなのだが、塩分の有無はときに生物の環境を大きく変えてしまうもの。まず、塩分があることでものの浮力が変わる。淡水にいたものを海水に入れると、それまで簡単に沈んだものが沈まなくなってしまう。例えば金魚を海水に入れると、塩分による浮力で自分の重力調節ができず、沈むことができないのだ。

3隻のシジミ漁の漁船がSF映画の中の秘密基地のように格納されていた(画像クリックで拡大)

 また、浸透圧という物理的な現象も起こる。例えば、それまで海水で生きていたものが淡水に入ると、周りの塩分が少ないため、同じ塩分濃度になろうとして、周囲の水分が体内になだれこんでくるような現象が起きる。つまり水ぶくれのような物理現象だ。その逆は想像しやすい。例えば漬け物に塩を塗るのは、その素材の水分を出すために塗る。このことで漬け物の保存性を増した知恵なのだが、おそらく生物にとっては、きわめて難しい環境の変化であり、極端な言い方をすれば、大気圏外に宇宙服も着ずに出て行くことに近いものがあると思えるのだ。

 そんなことまでしても、そこに棲もうとするには、それだけ難しい環境にすめば、外敵はほとんどいない世界であるという別天地を求めての生態なのだ。なんかそう考えてみると、昔から風水害に悩まされ続けながらこの地に暮らそうとする出雲の人たちの生き方に共通する何かを感じるのは僕だけなのだろうか?

シジミの大きさ選別機なのだろう。一緒に採れる殻も山積みとなっていた(画像クリックで拡大)