手入れの行き届いた美しい庭園があった

「無我」という横山大観の作品がある。川辺にたたずむひとりの童子の絵。無我という禅の悟りの境地を表現した作品なのだが、ボクは庭園のこの一部分を見たときに無我を感じた。きっとこの庭園にはそういった日本画の精神が宿っているに違いない
【撮影データ】
キヤノンEOS 5D markII、レンズ:キヤノンEF70-200mm F2.8L USM IS、シャッタースピード:1/3200秒、絞り:f3.2、ホワイトバランス:オート、ISO感度:1600
(画像クリックで拡大)

 足立美術館。故・足立全康氏が、自身の出身地である安来市の自宅敷地を利用して、1970年11月3日、「名画と名園」をキャッチフレーズに開館した。名画とは、近代日本画の巨匠である横山大観の一大コレクション。名園とは、現在の広さ5万坪にもおよぶ情緒あふれる純日本庭園。この日本、いや世界にも誇れる財産こそが、足立美術館の足立美術館たるゆえんである。

 日本人なら誰でも理解できる日本庭園を造り、四季折々の美しさに触れていただく。また庭園を鑑賞することで得られた感動をもって、近代日本画の巨匠・の横山大観の作品に接し、日本画の美と魅力とを知っていただきたいという創設者の願いがこめられているのである。

 世界に名をとどろかせた近代日本画家の一人、横山大観。「朦朧(もうろう)体」と呼ばれる、ぼんやりとした独特の描法を確立したことで知られる。日本での活動に行き詰まりを感じ、ニューヨーク、ボストン、ロンドン、ベルリン、パリなど海外での展覧会活動で高い評価を得た国際派の画家だ。

この庭園には「スキがない」と造景は言った。つくばいも灯篭(とうろう)も石も植栽も、すべて吟味されて、しかも心憎いまでに手入れが行き届いている。灯篭を背景に、手前のもみじの枝の自然な感じを収めてみた
【撮影データ】
キヤノンEOS 5D markII、レンズ:キヤノンEF70-200mm F2.8L USM IS、シャッタースピード:1/30秒、絞り:f8、ホワイトバランス:オート、ISO感度:1600
(画像クリックで拡大)

 足立氏の自叙伝「庭園日本一足立美術館をつくった男」(日本経済新聞出版社刊)によると、足立氏は裸一貫からさまざまな事業から得た利益を日本画、特に横山大観の作品の収集にあて、大観美術館と称されるほどの作品点数を所有するまでになった。昭和32年ごろに買った「杜鵑(ほととぎす)」という作品が最初。買えない時期は、大観の画集を切り抜いて額にいれて家に飾っていたという。

「石だけでも一日見ていても飽きない」と造景は言った(画像クリックで拡大)

 最も多いときで150点近くも所有していたというから実にスゴイ話だ。収集した生きた作品を、自分の郷里にプレゼントしよう。幼いときからさんざん苦労して育ってきた故郷で、青少年のために役立つことをしたい。この気持ちが、美術館開館へとつながったのだという。

 豊造は前にも書いたように共にイノシシ年生まれ。猪突猛進を絵に描いたような二人なのだが、実は足立氏もイノシシ年生まれというから面白い。

この時期は新緑がきれいだが、秋や冬の景色も見てみたい(画像クリックで拡大)