歴史モノに初挑戦!『7人のシェイクスピア』が生まれたワケ

――歴史モノは初挑戦。『BECK』だけでなく既存の作品とは全く違ったジャンルですね。

ハロルド作石氏(以下、ハロルド): 新作を描くたびに「これまでとはまったく違う」と言われます。でも今回はさらに違いが大きいと思います。昔の話で、舞台も外国。そういう意味では何かと苦労は多いですが、その分やりがいもあります。実際に描いていて一番難しいのは、「当時の生活とはどういうものか」を想像することですね。ただ「このときエリザベス女王はどう思ったのかな」など、歴史上の出来事からその行間を考えていくのは、マンガ家としてすごく楽しい。

――シェイクスピアに興味を持ったきっかけは?

ハロルド: 『BECK』の連載が終わってから、1年ちょっとぐらい休んでいたんです。その間、遊びにいったり、本を読んだりしていて出会ったのがシェイクスピア。実はウチの妻がすごくシェイクスピアが好きなんですよ。他人が興味あることって興味があるじゃないですか。それでシェイクスピアを読み始めて深みにハマっていきました。

――シェイクスピアのどんなところに興味を?

ハロルド: 作品がすごく面白かったというのがまずあります。そしてシェイクスピアって誰でも知ってますよね。それなのに本人について知られていることは少なくて、謎がすごく多い。そのギャップに興味を持ちました。

――シェイクスピアの正体については、「シェイクスピアはペンネームで、その正体は別の人物だったのではないか」という説がたくさんありますね。実はフランシス・ベーコンだったんじゃないか」「いやオックスフォード伯だったんじゃないか」など、諸説紛々です。そのような学説は意識して?

ハロルド: 学説がたくさんあるというのは面白いなとは思います。でも学説や、研究書にインスパイアされたとかいうのは特にありません。何かの学説がメチャメチャ面白かったというのはないですし、それをそのままマンガにしても面白いとは思えない。自分なりに本や学説を読んで面白いと思う部分があったら、筆が乗れば触れることはあるかもしれないですけど、それを下敷きにして描いていくということはないと思いますよ。

――ハロルドさんは「シェイクスピアが実は別人のペンネームだった」と考えていますか?

ハロルド: うーん、それは今後の展開をバラすことになっちゃうので今はなんとも…(笑)。 ただシェイクスピア作品を読んでいると傑作もあるしそうでないのもある。作品ごとに明らかに違うテイストだったりもします。「本当に一人で書いていたのかな?」と感じるときはありますよ。

――歴史モノだと史実は無視できないので、マンガにするときに難しい面もあるのでは?

ハロルド: たしかに歴史の中で「シェイクスピアが何年にどの作品を発表した」とか「何年に生まれて何年に死んだ」といった記録は残ってますよね。マンガだといってもそこは動かせない。シェイクスピアの人生は謎な部分が多いですが、だからといって荒唐無稽に「何を描いても面白ければいいんだ」とは思っていません。ただ淡々と史実を追っていくのもマンガとしてどうか。そのへんのさじ加減は難しい。でも自分はシェイクスピアの作品は大好きです。すごく面白いしリスペクトもしています。その作品を冒涜するようなものにするつもりはまったくないことは間違いないです。

――オススメのシェイクスピア作品はありますか?

ハロルド: すごく好きなのは『リチャード3世』。あと『マクベス』や『ヴェニスの商人』もイイ。今読んでも古びてないですよね。このマンガを読んだ人がシェイクスピアに興味を持ってくれたらすごくうれしいですね。でも自分がやらなくちゃいけないのは、単純に「読んで面白いマンガ」を描くことだと思ってます。

――『7人のシェイクスピア』は、今の段階ではお話がどうなっていくのか、先がまったく予想できないですが、ラストの構想はできてるのでしょうか?

ハロルド: 今の状態で「できてます」っていっても嘘臭くなっちゃいますよね(笑) でも基本的には、自分のこれまでの作品の中で、一番明確に骨組みができているんですよ。