“変えない”ことが使い勝手の向上に?

 各商戦における発表においては、スマートフォンや音声端末の機能強化にどうしても注目が集まってしまいがちだ。だが、そうした“進化”の部分だけでなく、既存機能の使い勝手についても、押さえておくべき部分が多い。

 例えば、NTTドコモは、操作キーやメニューの標準化を進めており、メニューにアイコンを表示するなどして分かりやすさの向上に努めている。また、auはキーの押し方に応じて3種類のキーパッドを用意した「beskey」を投入しているほか、同じくauとソフトバンクモバイルは、装飾メール絵文字の種類を3000~4500種類へと大幅に増加させる一方で、変換候補に装飾メール絵文字の候補も表示させるなどして、探しやすい仕組みを訴求している。

 一方で、auの「簡単ケータイS PT001」のように、使い勝手を“変えない”ことで、ユーザーの満足度を高めるというケースも見られる。これは2005年に発売された「簡単ケータイS」(A101K)を、周波数帯の再編に対応させたり、防水性能を備えたりした後継機なのだが、ターゲットとなる70代以上にヒアリングしたところ、「機能向上は不要で、それよりも同じ操作性である方がいい」という意見が多かったとのこと。そのため、ボタンの形状がやや変化したことなど以外はほとんど機能向上をせず、あえて前機種と同じ形を継承しているという。

 スマートフォンの人気により、先進的な機能ばかりに注目が集まる昨今だが、ユーザーの声に耳を傾け、それを反映させて使い勝手を向上させるというのは、顧客満足度を高める上でも非常に大きな要素となってくる。各社のこうした取り組みにも、ぜひ注目したいところだ。

NTTドコモは音声端末のメニューやキー配置の標準化を進め、操作方法の共通化をはかっていくという。いずれも右側が新しいモデルでの配置となる(画像クリックで拡大)

auの「簡単ケータイS PT001」。高齢者の利用が多いことから、彼らの声を受け、防水性能以外はあえて大きな進化をさせることなく、ほとんど変えていないという(画像クリックで拡大)

著 者

佐野 正弘(さの まさひろ)

 福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。