音楽CD(44.1kHz/16bit)よりもレートが高い96kHz/24bit記録には、ほかのPCMレコーダーでも対応しています。しかし、本当に96kHz/24bitを生かしているのだろうかという感じがしていました。数字の上では、音楽CDは記録できる広域が22.05kHzまでなのに対して、96kHzなら48kHzまで記録できますし、ダイナミックレンジ(再現できる音量の最小値と最大値の比率)は96dBから144dBまで上がります。しかし今までのPCMレコーダーでは、音楽CDレベルのいい音が録れるものの、それ以上のフォーマットでもそれほど音が良くなるわけではない……というイメージがありました。

 ICR-PS605RMはS/Nが高いというか、ノイズレベルが低いですね。小さな音もノイズに消されることなく録れます。それに強い音の立ち方がいい。ピアノの生演奏では、鍵盤のカチッとしたアタック音がつぶれずに入っています。もう一つ感心したのが、高域までワイドレンジに伸びている点です。他社のモデルでは高域になるほどだんだん下がっていくものが多く、倍音のフィーリングや広域のシャープな伸びやかさがなかなか出ないのです。

 我が家では娘がピアニストなので、スタインウェイ&サンズのピアノ(1930年代ハンブルグ製造)を弾いています。これはひじょうにハッキリクッキリした、明確で高品位な音を奏でます。切れ味とスピード感があり、演奏者の意図に沿ってエネルギーがほとばしるような感じですね。ICR-PS605RMは高域までエネルギーが減衰せずに伸びるので、切れ味のいいシャープな研ぎ澄まされた音を記録してくれました。

スタインウェイ&サンズのピアノで麻倉氏が演奏し、生録音をしているところ(画像クリックで拡大)

 自分のピアノ演奏を録音してみただけでなく、三洋電機がデモ用に収録したというバイオリン演奏とピアノ演奏の音も聞いてみました。どちらも演奏家の意気込みや意欲、テクニックが生の音として迸ってくるという感じがあって、鮮明な音が録れていました。96kHz/24bitらしい、ワイドレンジな周波数特性(低域から高域まで幅広い)でダイナミックレンジの広い(小さな音から大きな音まで幅広く収録できる)生き生きとした音ですね。

 ノイズレベルが低いので、かなり大きな音を出してもノイズのダメージを受けません。今回はピアノだけ録音しましたが、オーケストラや吹奏楽、ジャズコンサートなどあらゆる演奏シーンで記録したり、練習用としてチェックしたりといった用途には十分に使えると思います。

 その意味ではとても音楽録音に適しているモデルだと思います。生演奏の息づかいや勢いがびっくりするほど入っているのです。生演奏を生演奏らしく録るのがプロの世界です。そのためには部屋の音響を細かく検討した上でマイクをセットし、微妙にボリュームを調整して録音機器に収録します。ICR-PS605RMなら、ベストな録音のためのマニュアルボリューム調整は必要ですが、それも最大音圧が0レベルを超えないようにする程度。それだけで、適当に置いてもこれだけの音が録れるのはすごいことですね。

 内蔵マイクの性能も良いと思います。最高4万Hzまで記録できると資料にありますが、確かにそれだけの性能を感じました。人間の耳は4万Hzまで聞こえないと言われていますが、4万Hzまで出るスピーカーと2万Hzまでのスピーカーでは明らかに脳が感じる音が違います。その違いが録れていると感じました。