風邪の薬として有名な葛根湯は鼻炎にも用いる

このほか、「麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)」「葛根湯(かっこんとう)」「葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)」「麻黄湯(まおうとう)」「苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう)」なども使う。

 麻黄附子細辛湯は体力が低下し、全身倦怠、無気力、脈が沈んで力がない人の水様鼻漏を対象とする。薬方のなかに含まれる温薬の「附子(ぶし)」「細辛(さいしん)」には、血行を盛んにし身体を温める働きがある。

 葛根湯は風邪の薬として有名だが、発熱、悪寒がない場合でも脈が浮いて力があり、項背(こうはい)*4中に緊張感がある人の鼻炎にも用いる。筋肉の過度の緊張を取り、血管を拡張する働きがある。胃腸が弱い人や筋肉が弛緩している人に使うと脱力感、食欲減退などが見られるため注意がいる。

 葛根湯加川芎辛夷は葛根湯に、民間薬として鼻づまり、蓄膿症によく使われる「辛夷(しんい)」と痛みを和らげる働きがある「川芎(せんきゅう)」を加えた薬方である。本来は葛根湯の「証(しょう)」*5で鼻づまり、慢性鼻炎があるときに使うが、一般の慢性鼻炎、副鼻腔炎にもよく使う。

 麻黄湯は、日ごろから体が丈夫で体力が充実している者に使う。表位にある水滞(すいたい)*6を除く薬方で、表位の水毒によって起こる強い鼻閉が見られるときに用いる。「苓甘姜味辛夏仁湯」は、比較的体力が低下し冷え症で貧血気味の人の水様鼻汁に用いる。

 花粉症は地域、年次、個人によって差があり毎年、繰り返して起こることを頭に入れ、花粉から逃れるための予防が大切だ。外出にはマスクをかけ、帰宅後は玄関先で、衣服に着いた花粉を振り払って家に入るよう心がけることも大事だ。

*4項背:うなじと背中。 *5証:漢方独特の観点による見立て、診断結果。 *6水滞:漢方で、水(すい)の流れが停滞したために起こる病的状態をいう。下痢・浮腫・口渇・乏尿など。水毒。(大辞林)

著者

天野 宏(あまの ひろし)

1971年日経マグロウヒル社(現日経BP社)入社。日経メディカル副編集長,日経メディカル開発編集部長などを経て,現在フリーランス医療ジャーナリスト,薬学博士,薬剤師。
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