「コブクロ」(豚の子宮)は臭みを抜く

 コブクロの下処理。「コブクロ」というから“袋状”を想像していたが、これが豚の子宮(の一部)。「よく洗ってもアンモニア臭がある」(店長)そうで、切り込みを入れて流水にさらす。

コブクロの下処理。左手のボールにもともとのコブクロが入っている(画像クリックで拡大)

これがコブクロです(画像クリックで拡大)

中もよく洗うため、コブクロに切り込みを入れる(画像クリックで拡大)

そして流水にさらす(画像クリックで拡大)

 もともとコブクロはこんな形をしているらしい。図の最下段、16番です。

豚の内臓肉、部位名称とイラスト(画像クリックで拡大)

 “牛の子宮”は食べないんですか? 「考えたことない。大きいし硬いから」と店長。豚の子宮はおいしい? 「味はあんまりないの。食感が楽しい感じ。コリコリして“貝の青柳”みたいな感じかな。あれよりもうちょっと淡白で、歯がさっくり入る感じ」(同)。

 豚の子宮は“貝の青柳”のよう……。ではグロだけど芸術的ともいえるハチノス(牛の第2胃)は? 「和菓子にあるよね、ああいう食感。ねちゃねちゃして羊羹のもっと歯切れが悪い感じ。でも見た目のわりにおいしい」(同)。

2時間半ほど煮たハチノス(「亀戸ホルモン恵比寿店」にて撮影)(画像クリックで拡大)

 ハチノスはねちゃねちゃして羊羹のもっと歯切れが悪い感じ……か。ワインを表現するソムリエの言葉に“濡れ犬の香り”なんていうのもあるそうだけど、「ホルモン青木」もこうした大胆かつ繊細な、言い得て妙のひと言をメニューに添えてはいかがでしょうか。

“放るもん”が商品として洗練されていく

 仕込みでは部位ごとの特性に合った下ごしらえをする。元来“放るもん”がひと皿数百円の商品となるための“洗練”だ。細かい間隔で包丁目を入れるのも、素材をおいしく味わう食文化。魚でいうとイカの感覚か。ぬたぬたしたイカも「鹿の子包丁」(格子の切り込み)があると噛みやすく、歯ごたえにアクセントが出る。味もしみやすい。

ハツモト(牛の心臓の大動脈)。切り目を格子に入れる(画像クリックで拡大)

牛のあご肉に包丁目を入れる(画像クリックで拡大)

ハラミ(牛の横隔膜)のスジを取るところ(画像クリックで拡大)

2つに割ったカルビの塊を1枚ずつそいで、重さを測り、ひと皿分ずつ用意する(画像クリックで拡大)

それはなんですか? 「えんがわです。豚のハラミ(横隔膜)です」(画像クリックで拡大)

 開店前、炭の準備も着々と進む。

ドライヤーの風で炭の火をおこす(画像クリックで拡大)

 かつて“放るもん”とも揶揄されたホルモン。だが、今やその人気は焼肉屋をしのぐらしい。不況の世相に合い、「食べたことのないものを口にするスリル」や「多様な食感」が味わえ、「七輪の炎」が気持を高揚させる。火がぼうぼうと燃えるそばで火照るのも、ホルモン屋ならではの楽しさだ。カップルなら“2人きりのキャンプファイヤー”、みたいな。

炭に落ちた脂が燃えて火柱が上がる(画像クリックで拡大)