ブラームスを思わせるような重厚感と官能性

 edition8を作っているULTRASONEはドイツの会社です。この音は「ドイツ的な音」という形容が与えられるでしょう。ドイツにはULTRASONEのほかにSennheiser(ゼンハイザー)などがあります。良い意味のドイツの音というのは低音をしっかり鳴らしつつもキッチリと情報を再現し、それでいてデジタル的な冷たさがなくて音楽的な香りがします。隣国のオーストリアに本拠を構えるakg(アーカーゲー)なども同じような印象です。

 僕は先日、長野県の松本にサイトウ・キネン・オーケストラを聴きに行ったんですよ。演目はラヴェルの「道化師の朝の歌」と「シェエラザード」、ブラームスの「交響曲第2番 ニ長調 作品73」です。

 小澤征爾とサイトウ・キネン・オーケストラは上手いですね。初めのラヴェルはラヴェルの音。たゆたって、そこはかとない、フランス的なエスプリの軽妙洒脱な音楽でした。最高度の透明感で、微妙な、壊れやすい世界を見事な語り口で描きました。ところが演目がブラームスになると、途端に低音の引き締まり感や量感のある、ブラームスの音になるのです。

 ブラームスらしい低音からの安定した骨格感と、第1ヴァイオリンで高域の官能さとの対比が実にダイナミックレンジでした。響きは分厚いのに、各声部の解像度が高く、透明なのは名手の技の集積だからです。

 edition8にも、そんなブラームス的な響きを感じます。低域がしっかりしていて情報量も多い。しかし単に情報量が多いというだけでなく、そこに感情がこもっていて、ブラームスみたいに官能的な音も聞こえてくるのです。その共通点には、ドイツの精神というか、風土的なものがあるのではないか、なんて考えさせられるところもおもしろいですね。

各国の風土を感じるのもオーディオの楽しみ

 オーディオには、各国の風土を感じるという楽しみもあります。例えば米国のJBLはジャズが得意で、ジャズのソウルというか魂の叫びみたいなのを表現してくれます。JBLは映画音響にも強いので、JBLの固まり感があってシャープな音の特質がホームシアターにも向いていますね。ヘッドホンならShure(シュアー)やKlipsch(クリプシュ)などがあり、ワイドレンジで切れ味が良いのが特徴の一つです。

 英国のスピーカーは世界的に評価が高いのですが、それは英国という国が「音楽を生む国」ではなくて「音楽を消費する国」だからです。例えばロンドンだけでもオーケストラが7つほどもあるんですよ。クラシックのミュージックラバーが聴きたいような、バランスのいい音楽を素直に出してくれるという良さがあります。

 日本のヘッドホンなら、オーディオテクニカやソニーなどがあります。クセっぽくなく、情報量が多く、音楽を“生成り(きなり)”に出してくれるのが特徴です。

 ドイツは重厚さの上に骨格感があり、しっかりとした音を出してくれるだけでなく音の味わいともいえるものがある。例えばELAC(エラック)というメーカーのスピーカーは透明感が高くてスピードが速いだけでなく、しなやかで柔らかい音がする。

 このように風土や精神構造など、お国柄のようなものが垣間見えてくるのがスピーカーやヘッドホンの世界のおもしろいところです。