いつかは、人を感動させるものをつくりたい

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――コンテンツ系が専門の弁護士は少ないとのことですが、なぜその分野を選んだのですか?

八代 裁判官をしていると、社会や人間の嫌な部分を直視しなければならないことが多くあります。とても凄惨な事件を担当することもありますし。それに少し疲れて、人を感動させたり、喜ばせたりできる仕事をしたいなと思いました。例えば、映画。2時間で人を泣かせたり笑わせたりできるわけじゃないですか。自分の専門を生かしつつ、それらにかかわる仕事をしたいなと思ったのです。裁判官をやっていたから、刑事事件専門の弁護士になるというのではなくて、ゼロからものをつくる仕事をサポートするようなことがしたいと。

――人を感動させることにかかわって、弁護士として何ができるかと考えたときに、著作権が出てきたんですね。

八代 アメリカでは、ほとんどのプロデューサーが弁護士の資格を持っています。法律社会で、必ず契約しないと物事が進まない。俳優の契約もものすごく細かい。だから、プロデューサーは法律のバックグラウンドがある人じゃないと務まらない。日本では、製作現場からプロデューサーになる人がほとんどです。彼らはものをつくることには長けていても、契約とか法律解釈は必ずしも得意じゃない。自分がそういった部分で、ものをづくりをサポートできればと考えたのです。

――それでは、そもそも弁護士になろうと思ったきっかけは?

八代 最初は医者になりたかったんです。高校も理系で、浪人してまで医学部を受けて。でも、どうしても大学の側が「入っていい」と言ってくれないんですね(笑)。うちは教育には金かけたくないっていう家庭で、医学部だったら国立以外ダメだって言われたんですよ。

もの書きにずっと憧れていた

――それで、医学から法学へ。人の役に立ちたいという気持ちが強かったのでしょうか?

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八代 専門性があって、人の役にも立てる仕事に就きたいと思っていました。あと、昔から本が好きで、もの書きの仕事もやってみたいなと。遠藤周作、北杜夫、森鴎外、みんなお医者さんですよね。高校時代に彼らの本を読んで、自分も同じように医者をやりながら、もの書きもしたいなと思っていました。ゆくゆくはものを書きたいという思いは、今もずっと持っています。知事とか、政治の方向に行こうというのは全くない(笑)。でも、弁護士から政治家を目指す人の気持ちはわからなくはないです。弁護士は法律を解釈、運用する仕事なので、こんな法律があれば、とか、この法律はここがダメだな、とか思うこともある。それを自分が代表者になって変えたいと考えるのは自然なことです。ただ、自分がそれをやりたいとは思えませんね。

――これからの夢や目標などを聞かせていただけますか?

八代 PCとネット環境さえあれば仕事ができるというのが理想ですね。海の近くで、目の前にヨットをつないでおけるようなところに住んで。そして、人を感動させられるようなものを書いてみたいと思います。専門分野に関する本は何冊か書いていますが、法律など自分の専門とはまったく関係ない、フィクションや小説を。もっと言うなら、映画の原作を書きたい。ゼロからものをつくることのできる人にずっと憧れていたので、いつか、自分がものをつくり出す立場になれればと思います。