パナソニックが中国で販売したスリム冷蔵庫「NR-C23VG1」(画像クリックで拡大)

 横幅をわずか5cm短くしただけの冷蔵庫が、前年の10倍も売れたという。パナソニックが中国で発売した“スリム冷蔵庫”だ。

 従来、同社が中国で発売していた冷蔵庫は、最も幅が短いもので60cm。ヒット商品のスリム冷蔵庫は、これを5cm短くして55cmにしたのだ。

 特別な機能をつけたわけではない。価格を引き下げたわけでもない。なぜ、それがヒット商品となったのだろうか。

 実は、この裏にはパナソニックが上海に設置した中国生活研究センターの研究成果がある。

 同センターは、所長の三善徹氏以外は、すべて中国人スタッフ。所員全員で8人のこぢんまりとした陣容だ。だが、このセンターから生み出される研究成果が、中国市場に最適化した白物家電製品の創出につながり、パナソニックの存在感を高めている。

 同センターの役割は、中国の生活や家庭情報を研究、調査して、商品企画や商品開発に結びつけることにある。

 中国人スタッフは仮説を立て、それを実証するための調査、研究をする。年間400件の家庭を訪問し、140人を対象にした年20回のグループインタビューも実施する。年5回の街頭インタビューは約800人が対象だ。エリアは中国全土に渡る。

 多くの企業では製品企画チームが中国に1~2週間滞在し、市場を調査し、そこから中国向けの製品企画を仕上げる。ただ「わずか数週間で市場性を掌握できるわけがない」(三善所長)。調査規模も小さく、実態を反映しているとは言い難く、広い中国では地域ごとの特性も理解しなくてはならない。欧州では国によって市場性が異なるように、中国も地域によって嗜好(しこう)が大きく変わる。三善所長は「中国生活研究センターを設置してから、こうした市場調査が大規模に、しかも長期間に渡り実施できるようになった」と語る。

 市場調査の対象としているのは、パナソニックが主なターゲットとする富裕層と「ネクストリッチ層」と呼ばれる家庭だ。所員はメモ帳、デジカメはもとより巻き尺まで持って家庭を訪問する。家でどんな生活をしているのか、どんな課題を持っているのかをとことん調べあげる。5cm短い冷蔵庫も、その調査結果から開発されたものだ。

上海のパナソニック中国生活研究センター(画像クリックで拡大)