去る9月19日、CM演出家で映画監督の市川準氏が59歳で急逝した。映画編集作業中に倒れ、生涯現役のまま帰らぬ人となった。広告・映画共に多くの名作を遺した市川氏。特にテレビCMでは『禁煙パイポ』や『金鳥シリーズ』など、歴史に残るヒットCMを20年以上に渡って世に送り出してきた。

 1988年以降、CM総合研究所のデータベースに記録された作品だけでも全610作品を数える。独特のユーモアセンスで知られる市川準の世界。代表CMを振り返ってみたい。

CMから生まれた流行語
「私はコレで」「すったもんだがありました」

 古くは、「私はコレで会社を辞めました」で有名な84年の『禁煙パイポ』。小指を立てた男性の一言が、一世を風靡(ふうび)した。

 「亭主元気で留守がいい」の『タンスにゴン』は、86年上半期のCM好感度No.1。町内会の寄合にて、木野花、もたいまさこの「亭主元気で」の言葉に続き、「留守がいい」と主婦たちが声を合わせる。

 カタログショッピング(通信販売)の『ニッセン』でも、オバさんパワーが炸裂。石田えり、田島陽子ら主婦3人が「♪見てるだけ~」と言いながら衣料品店を物色する。このセリフも流行語となった(94年)。

 多くのヒットを残したのが、大日本除虫菊。キャスティングに注目したい。アーケード街を歩くちあきなおみに向かって、「もっとはじっこ歩きなさいよ!」と一喝する美川憲一。自転車で通り過ぎざまに「お元気~?」とイヤミな一言を決めるバージョンもあった(90年)。アメリカ進出したころの松田聖子には「♪タンスにゴン アンビリーバボー」とN.Y.の街中で歌わせた(92年)。「ゴンゴンチャチャチャ」のリズムで社交ダンスを踊ったのは、ゴン中山と桃井かおり(94年)。

 99年には沢口靖子を『金鳥ゴンゴン』の顔に抜擢する。お嬢様女優に3枚目を演じさせ、ヒットを連発。雛人形に扮して「くっさ~」と愚痴るCMは、月間No.1に(2000年2月度)。ニセモノの巨乳の谷間に『金鳥ゴンゴン』をつるして熱唱し、「あ~アホくさ」とつぶやく「ショータイム」編(2001年)も記憶に新しい。

 また、大滝秀治と岸部一徳の“父子CM”も忘れられない。「お前の話はつまらん!」と一喝する大滝の存在感には圧倒された(2003年)。

 そのほか、“時の人”を使った名作といえば、94年の宝酒造『タカラcanチューハイ』。貴乃花(当時)と婚約解消をした宮沢りえに「すったもんだがありました」と言わせた大胆CM。95年の「ごますり」編では、市川氏本人が“りえママ”の隣でラーメンをすすってチラリと出演している。

 このようなスキャンダルぎりぎりのCMや、アクの強いタレントCMでも、決して嫌みにならず、スパイスの効いたユーモアに転ずる演出はさすがだ。