ライ・クーダーはリアルハワイのニセ物!?

 ところで、我々がリアル・ハワイのサウンドに触れるきっかけになったのは、ライ・クーダーの名盤『チキン・スキン・ミュージック』(1976年)だった。ここでライは、ハワイルーツ音楽のカリスマ、ギャビー・パヒヌイを紹介したのだった。

 「ギャビー? 面白い名前だな」とみなが思ったに違いない。この盤で、我々はそれまでに聴いたことのない、自然の香りのするアコースティックギターの音色を聴いた。独特の人なつっこい素朴な音に、一躍注目がハワイに集まった。この後、一気に、アメリカになる前から続くリアルハワイの音楽を見直そうという動きが高まっていた。

 そうしたライの民族音楽の紹介の仕方は、90年代のライの作品『ブエナビスタ・ソシアル・クラブ』にも通じるものがある。ご承知の通り、この、映画とCDにまたがった企画は、空前のキューバ音楽ブームを巻き起こした。しかし、ライが現地セッションに加わっていることについて、「本場の音楽にとってよけいだ」みたいなことをいう声も聞こえてきた。

 前述の重鎮ギャビーに心酔する、日本でもカリスマ的に有名なウクレレ奏者ハーブ・オオタもこういう。「ライ・クーダーについては、別になんとも思わないよ。アメリカ人のハワイアンはすぐにわかる」

 ニセ物だから関知しないというのだ。『チキン・スキン~』がきっかけで、いろいろ始まったと思うのだが。僕はライの提供する音楽とビジョンは、常に素晴らしいと思う。ライのおかげでいろいろな音楽を知ったし、音も大好き。好き嫌いは、聴いて感じて判断していただきたい。

 そして、そしてである、そんなオオタも、昔から伝統ハワイ音楽を志したわけではない。そこが、本日の話の核心となる。

ライ・クーダー(画像クリックで拡大)

ライ・クーダー
『チキン・スキン・ミュージック』
ワーナー/org.1976年(画像クリックで拡大)