DoubleClickを買収した効果が早くも表れた

 「Google」がプライバシー情報を蓄積しないと言明した背景には、「DoubleClick」の買収にまつわる欧州連合(EU)へのメッセージがあるのだろう。買収計画が発表されたのは昨年の4月だが、当初EUはインターネット広告市場における「Google」の勢力が不当に強まることで消費者がプライバシー侵害のリスクにさらされることを懸念していた。このため、GoogleのDoubleClick買収は許可されないのではないかと見られていたが、今年3月11日、欧州委員会は業界関係者の意表を突いて買収を承認した。

 意地悪な見方だが、「Google」としても、ここはやはりEUに忠誠を示すような発言をしたいのだろう。この発言に合わせて、「DoubleClick」を使った「Google」の本格的な広告ビジネス展開も目立つようになってきた。4月2日には「DoubleClick」の検索エンジンマーケティング(SEM)事業を売却すると発表している。

 さらに注目したいのは、5月19日に広告のためのネットワークをサードパーティーに開放する決定をしたことだ。これによって、「Google」に認定されたパートナー企業が自前で広告を展開したり、クッキーを使った消費者の追跡をしたりすることが可能になる。

 これは「Google」の広告技術の進歩の結果と見ることができるが、むしろ「DoubleClick」が囲い込んだ顧客をそのまま「Google」に誘導することができるという意味で、早くも買収の効果が発揮されたことになる。

 ここに来て「Google」は、ようやく新時代の広告会社としての本性を見せ始めたようだ。消費者やEUに対して優等生である一方で、従来の広告市場にとっては次第に大きな脅威となってくるだろう。テレビや新聞といった旧メディアは、その屋台骨である広告収入を「Google」によって削られることになる。

「Google」では広告業推進の基礎にかかわるプライバシー問題を「YouTube」を通して広報している

著者

佐藤 信正(さとう のぶまさ)

テクニカルライター。1957年東京生まれ。国際基督教大学卒業後、同大学院で言語学を学ぶ。小学生のときにアマチュア無線技士を免許をとり、無線機からワンボード・マイコンへ興味を移す。また初代アスキーネットからのネットワーカー。通信機器や半導体設計分野のテクニカルライターからパソコン分野へ。休刊中の「日経クリック」で10年間Q&Aも担当していた。著書「Ajax実用テクニック」「JScriptハンドブック」「ブラウザのしくみ」など。