ハリウッドが大なたを振るった

 「上から大なたを振るわないと争いは終わらない」──。今回の場合、大なたを振るったのはハリウッドということになる。ハリウッドが光ディスクを本格的に支持するためには、次世代光メディアの分裂を早急に解消させる必要がある。BD支持を明確に打ち出し、BDへの一本化を図らねばならない。ハリウッドの対応にも温度差があるため決して一枚岩ではないが、年明けからのワーナー・ブラザースによるBD支持などの動向を見ていると、そうした明確な意志が感じられるのである。要するに「光ディスクで商売したいから、この辺で次世代メディアのケンカを止めさせる」ということだ。

BDは意外に息の長いメディアになる

 録画ファンの一人として筆者のHD DVDへの思いも書いておこう。録画メディアとして見た場合、DVDとアプリケーションフォーマットで互換性のあるHD DVDには、DVDから「無劣化高速ダビング」が可能など、“次世代DVD”としてのユニークな魅力があると思う。その規格策定時に関係者の方々と要望や意見を交わしたことも思い出に残っている。そうした魅力あるHD DVDが、BDとの統合のチャンスを逃し、ユーザーの利益から乖離(かいり)した政争の具で終わってしまうのはとても残念に思える。

2007年10月のCEATEC JAPAN 2007に参考出展していた、東芝HD DVDレコーダーのフラッグシップモデル「VARDIA RD-X7」。撤退か、それとも“BD対応”か──VARDIAシリーズの今後も注目される(画像クリックで拡大)

 HD DVDに対応したレコーダーである東芝「VARDIA(ヴァルディア)シリーズ(RDシリーズとも呼ばれる)」の今後も心配される。実際にネット掲示板ではBDに対応することでVARDIAシリーズの存続を望む声が多く聞かれる。BDとHD DVDのマルチ対応レコーダーを望む声もあるが、両対応ドライブを積めばOKというほど話はたやすくはない。OSや設計思想が全く異なるBDとHD DVDの再生システムを2 in 1で同居させることは、コスト的にまず不可能だからだ。

 結果としてレコーダーからの「撤退」か、あるいは「BDのみ対応」の選択を迫られることになると予想される。RDシリーズのコンセプト(ハードディスクを介して各種光ディスクと相互に無劣化高速ダビングできるのが基本)からすると、DVDとの間にデータ互換の壁があるBDの採用は、明らかにあり得ない選択肢といえる。しかしながら、多くのユーザーのニーズを実現するのもRDシリーズのコンセプトだろう。そのニーズには“BD対応”も含まれる。設計者にとって苦渋の選択になると思うが、RDシリーズの優れたGUIや編集機能を是非とも将来に残して欲しいと願う。

BDは意外に息の長いメディアになるかもしれない(画像クリックで拡大)

 そうした不安はあるのだが、次世代メディアが早急に統一されること自体は、ユーザーにとってこの上ない朗報だろう。BDが事実上の世界標準となることで、いよいよ次世代メディアが本格スタートすることになる。パッケージメディアとして見た場合、BDは意外に息の長いメディアになるかもしれない。光ディスクであるBDはプレス製造によって低コストで大量生産できるが、対抗馬であるHDDやフラッシュメモリー、ホログラムディスクなどはプレスによる量産が利かないため、パッケージメディアとしては失格だからだ。

 東芝の撤退がどのレベルになるのかなど、状況は依然として不透明だ。新しい展開があった際にまたコメントしたいと思う。

著者

増田 和夫(ますだ かずお)

デジタルAVなど先端分野が得意なオーディオ&ビジュアル評論家。PC誌やWEBでの取材&評論で活躍中。いわゆる物欲系レビューというよりは「モノとにらめっこをするのではなく、メーカーからの“ゼロ次情報”を大切にしたい。ユーザーの意見をメーカーに伝え、モノの背景にあるコンセプトと開発者のメッセージを探りたい」がモットーで、インタビューなどのジャーナリスティックな記事も得意。大の録画ファンで、エアチェック録画は1970年代から熱中。PC歴も20年以上のベテランだ。