耕耘機(こううんき)でたどり着いた桃源郷

 けっこう飲まされフラフラになっていると、男朋友が、「今日はもう濾沽湖に帰らずうちに泊まれ」と言ってきた。それで下山し、彼の家を目指すことになった。麓から見る獅子山は、さすがに神聖な何かが棲んでいるような山だ。こんな景色を見ながら育った人は、私たちとはまったく思考回路も性格も、違うのではないだろうか。

耕耘機が登場(画像クリックで拡大)

 しかし道は非常に悪く、ぬかるんでヌルヌル滑り、足が取られてなかなか進めない。これでは彼の家へ行くのは無理だと断念。朝から世話になっている運転手のおじさんを電話で呼び、濾沽湖へ帰ることになった。しかし、おじさんが来るという場所で待っていたが、いっこうに現れない。道が悪すぎて、来られないようなのだ。そこへさきほどの男どもが、大きな耕耘機の荷台に乗って現れた。そこで、これに乗って、運転手をこちらから迎えに行こう、ということになった。

 耕耘機はさすが農機具。グチャグチャの悪路をものともせず、ぐんぐん進む。10分ほどで、彼らの村に着いた。そこは桃源郷のような村だった。モソ族のログハウス風の家が建ち並び、民族衣装を着た人々が歩いている。目の前には美しい田園風景が広がっていた。
 耕耘機を降り、しばらく歩くと、例の運転手が三たび登場した。私たちは、
「ガオビさん、今日はありがとう!」
と言って車に乗り込んだ。運転手のおじさんは、相変わらずの乱暴運転で、グチャグチャの悪路を果敢に運転していたが、途中でついにスタック。タイヤの下に段ボールを挟み、おじさんがアクセルを踏み、私たちが後ろから押したが、まったく抜け出せない。困ったおじさんが、「友人を呼ぶ」と言って電話をすると、5分もしないうちにどこからかドヤドヤと5~6人の男たちがやってきて、ぐいぐい押してくれ、そこを抜け出すことができた。が、おじさんは走り屋の面目をつぶされて、ややションボリしていた。