「あまりイヤホンやヘッドホンで音楽を聴くのが好きではない」という大口氏。“Rolly”は携帯できる高音質スピーカーがコンセプトだ。

 聴きながら曲を探す楽しみのために液晶は省き、周囲も巻き込むためにヘッドホン端子は省いた。「踊る」機能ばかりが目立つが、実は、携帯できる高品質スピーカーという発想から商品の企画はスタート。そこにAIBOでつちかったロボット技術を生かしてオマケで踊らせたのが“Rolly”というわけだ。

 ちょうどiPod Touchや新型ウォークマンの発表とタイミングが同じ時期になったので誤解されやすいが、携帯型ヘッドホンプレーヤーは意識していないし、まったくの別物という感覚らしい。

 大口氏自身、「あまりイヤホンやヘッドホンで音楽を聴くのが好きではない」ということも大きいようだ。あの閉塞感よりも、やはり音楽は空気を震わせてスピーカーから体感で聴きたい。ただ夜中に高級スピーカーで聴くのもいいが、そうではなく、かつてのラジカセのように、持ち歩けて、風呂に入るときは脱衣場に置いたような、人肌感というか、無機質でないインタフェースを重んじている。iPodなどの携帯音楽プレーヤーと、自宅の部屋で使う“Rolly”は両立する、というのが大口流だ。

 「あるようで、なかった商品だと思う」と胸を張る大口氏。発売前に面白いなどといった肯定的な意見と、値段が高すぎるという否定的な意見が二分したことは想定済みだったという。

 「みんなの意見を聞いて取り入れて、変に総花的・普遍的商品にはしたくなかった。トガったものにしたかった。そういう意味では狙い通り」。

 社内でも評価は分かれていたが、自信はあった。その根底にはみんなが受け入れるものは、結局、誰も欲しがらないものになりがちという厳然たる「物欲の法則」がある。そういわれて、ふと思ったのが、最近のソニーは、みんなに受け入れられるものを追求していなかったか、ということだった…。

 一方踊りの機能に目を移すと、発表会の会場で人気があったのは、ブレイクダンス的な激しい動きよりも、波の音(自然音)に合わせた静かな動きだった。波の満ち引きに合わせて“Rolly”が不思議な動きで前後に揺れる。これがなんとも癒されるのだ。筆者は「鳥の声」みたいなものが、寝る前と起きたときなんかにいいなあ、と思っている。

 卵型の両先端がパカッと開くがこれが壊れやすそうで、落としても大丈夫ですか? との問いには「逆転の発想で着脱式にしたんです」と、フタをとって見せてくれた。なるほど。ホイールのゴム部分も、もともとは机などの共振を抑えるためのグリップなのだが、これが落下時の保護も兼ねている。

 ともかく“Rolly”は、見て触って初めて価値が分かる商品。量販店などで是非、「見て、触って、体験してほしい」と大口氏は語る。ちなみに筆者は、その小ささに驚いた。発表会で見ていたのに、インタビュー取材で改めて見ると、意外に小さいことに驚く。確か、お披露目会ではもう少し大きかったような気がして、大口氏が持ってきた“Rolly”を見て、これはミニチュアですか? と尋ねて笑われてしまった…。

著者

麻生香太郎(あそう こうたろう)

大阪市生まれ。東京大学文学部卒。在学中に歌謡曲の作詞家として活動を開始。森進一、野口五郎、小柳ルミ子、小林幸子、TM NETWORKらに作品を提供した。その後、80年代半ばにエンタテインメントジャーナリストへと転身。以来、20年以上にわたって業界をウォッチし続ける。現在は「日経エンタテインメント!」「テレビ・ステーション」などで連載コラムを執筆中。著書に『ジャパニーズ・エンタテインメント・リポート』(ダイヤモンド社)など。