みんなよく食べよく飲んだ。それにしても昼間からカンペイの嵐とは、聞きしにまさる中国人の体力である。テイスターの女性に「風邪なんかひいたら仕事にならないですよね?」と聞いたら、「そりゃそうよ! 私はこの3年間風邪ひとつひいたことないわ」と自信満々に答えていたけど、肝臓の方もそうとう強そうだ。

 宴会が終わると、今度はお茶に招かれた。工場の中に庭園があり、ところどころに盆栽を配した滝がしつらえてある。そこを通ってお茶処へ。透明なグラスに直接茶葉を入れ、熱い湯を注ぐ。茶葉は緑色で、細くとがっている。茅尖茶(マオチェチャ)という高級なお茶らしい。上品な甘みがありうまい。四川はお茶でも有名で、このほかにもいろいろな種類のお茶があるという。

 さて、お茶がすんで、ようやく工場見学である。白酒のシーズンは冬。だいたい9月末から始まって、7月には終わり、夏には造らない。というわけで、この日工場は稼働しておらず、ガランとしていた。

 まず麹から、と思ったが、金盆地では麹は造っておらず、麹会社から買ってくるのだという。その麹と、コーリャン、小麦、トウモロコシ、もち米などを合わせたものを、地下の穴に埋めて、上からも土をかぶせてしまう。もろみが液体ではなく、個体なので穴に埋めることができるのである。これが白酒独特の個体醗酵だ。この穴を窖池といい、一般に長さが30メートル、幅が2.2メートル、深さが1.5メートルの直方体で、容積は10立方メートル前後である。

 このまま温度調節はとくにせず、2~3ヶ月穴の中で醗酵させる。それを蒸留し、残った酒粕を冷やし、さらに新しい材料と麹を加えて地下に埋め、醗酵させる。それをまた蒸留し……、ということを8~9回繰り返して酒ができるというわけだ。残った酒粕を何度も使い回すというのが白酒の蒸留法の特徴で、粕を完全に捨ててしまうウイスキーや焼酎とはここが違う。

 地下の穴は、コンクリートなどで固めたのではなく、黄土でカチカチにぬり固められている。これは使い込めば使い込むほど、味の良い酒ができるそうで、この工場は新しいが、中には100年や200年の古い穴ぐらもあるという。

 金盆地の醗酵室には、盛り土をした穴がいくつも並んでいた。大規模な工場になると、体育館ほどの広大な醗酵室があり、何十個もの穴ぐらが並んでいるという。醗酵室の中は、堆肥のような異臭がしていた。白井嬢なんか、後になって「なんだったんですかあのニオイ! もうカブトムシでも大量に飼ってるのかと思いましたよ~」と言うほどであった。しかし、これはあくまでも穴ぐらの匂いであって、中のもろみは馥郁たる香りを醸しているというから不思議である。

金盆地の醗酵室(画像クリックで拡大) 金盆地の蒸留器(画像クリックで拡大)