「時代を映す鏡」と称されるテレビCM。そこには必ず社会現象の影響が色濃く現れる。

 現在、テレビCMのトレンドを語る上で欠かせないのが「Web検索CM」。検索キーワードを入力する「検索窓」が画面表示され、Googleなどでの検索を促すCM手法だ。もはや、一般化した感のある手法だが、この手法がテレビに登場したのは2005年のこと。 先駆け的な作品としては、三井不動産のマンション「芝浦アイランド」のCMがあげられる。

 5羽の鳥が「港区の芝浦に島があるらしい」とSMAPの5人の声で会話をするCMで、最終画面の検索窓には「芝浦の島」と表示。ナレーションでも「芝浦の島を検索して下さい」と、念入りに検索語を繰り返しアピールしていた。当時、Web検索を促すCMは視聴者にとってまだ馴染みがなく、時代の先端を行く最新手法だった。

 2005年度制作のWeb検索CMは42作品。2005年度の12カ月間にオンエアされたCM総数は1万7886作品(東京キー5局のみ)で、オンエアCM総数に占める検索CMの割合はまだ0.2%どまりだった。

 その後、インターネット・情報環境の進化に伴い、この3年間でWeb検索CMは格段に増加した。今年2007年上半期には、725作品が誕生した。前年同期の71作品と比較すると、10倍以上の増加となる。これは前述した2005年度の作品数の約17倍にあたる。わずか3年間でのテレビCMのすさまじい変化に、改めて驚かされる。

 Web検索CMを積極的に活用している産業分野は、情報通信系を筆頭に、娯楽・興行、マスコミ・教育系など。上記業種に比べ、業種全体のオンエア総数は少ないものの、住宅・建設、衣料、住宅設備系でも増加傾向が強い。とりわけ、携帯電話やゲーム機、マスコミなどの“情報”関連産業や、マンションなどの高額商品を扱う産業で、より積極的にWeb検索CMが取り入れられているようだ。

 このようなWeb検索CM急増の背景には幾つかの要因がある。情報環境の進化に伴うインターネット人口の増加。時間的制限が無く、テレビCMよりも豊富な情報訴求が低コストで可能というWebの特性。Webサイトが口コミやブログなどで話題となれば、効率的に広範囲への情報伝播が期待できる、などなど。

 こうして見ると「大半のテレビCMが、インターネットと連動か?」と考えがちだが、今年上半期制作のWeb検索CMがCM総数に占める割合は、まだ6.4%にすぎない。当面、増加傾向は続くと思われるが、現在がWeb検索CMのピークと言ってよいだろう。というのも、検索CMの効果の測定は未だ発展途上段階にあり、企業サイドも試行錯誤の中にあるからだ。当然のことながら、単にCMに検索窓をつけるだけでは、実際の検索行動・購買行動には結びつかない。

 

 まず、テレビCM自体が人々を引きつけなければ、視聴者の心に残らず、検索への意向も意欲も、かき立てられることは無い。ほかにも、検索窓の存在は認識されているが、覚えやすく好まれる検索語であるか、容易かつ正確に自社サイトが検索結果に表示されるか、たどり着いたWebサイトは視聴者をひきつけたか? など、課題は山積みだ。せっかく検索したサイトがつまらないものであれば、ブランドイメージを損なう逆効果となることすらある。

 Web検索CMのみならず、メディアミックス、クロスメディア的手法は、今後も確実に増加の見込みだ。各メディアの特性を生かし、互いを巻き込んだ相乗効果をもたらすには、まず基本に立ち返り、テレビCMもWebサイトも、視聴者マインドをつかむことを忘れてはならない。視聴者が日常的に接触するメディアの主役は、やはり“ながら視聴”が可能なテレビである。視聴者との最初の出会いの場となるテレビCMが魅力的でなければ、Web検索CMが奏功することはない。

 手法の斬新さは既に薄れつつあるWeb検索CM。真の効力を発揮するには、まさにこれからが正念場ではないだろうか。

著者

関根建男(せきね たつお)

CM総合研究所 代表。1939年群馬県生まれ、早稲田大学教育学部英語英文科中退。在学中よりフリーランスのジャーナリスト、プランナーとして、大宅壮一門下・上野壮夫(東京コピーライターズクラブ初代会長)の薫陶を受ける。1965年日産自動車に入社し、1966年より宣伝部制作室チーフコピーライターとして「隣のクルマが小さく見えま~す」などヒットコマーシャルを世に送り出した。1976年に株式会社東京企画を設立。1984年に日本初の本格的テレビCMデータバンクを設立。同時にCM総合研究所を設置。会員各社に情報を提供している。