いよいよ「バット・ディテクター」に魅せられた科学大好きな男たちによって結成された「デジタルARENAプレゼンツ 特別企画“科学大好きコウモリ探偵団”(仮名)」による実地調査が始まった。

 環境調査を行う緑生研究所の主任研究員である永野治さんと、同僚で哺乳類調査の専門家である金子賢太郎さん、そして、尼崎太郎に無理矢理引きずり出され、カメラマン役を押しつけられた酒井康治デジタルARENA編集長を加えた4人の探偵団メンバーは、取材当日の昼過ぎ、東京・秋川渓谷に到着した。

緑生研究所調査部副主任研究員の永野治さん 緑生研究所調査部研究員 金子賢太郎さん

突然道をそれて藪の中に入り込んだ調査員

 一番早い時間に飛び始めるヤマコウモリだと、日没前に巣を出ることもあるそうだ。しかし、ほとんどの場合は日没直後から飛び始めるということなので、日のあるうちは、コウモリ以外の哺乳類、爬虫類、両生類に対して、普段と同様に調査してもらうことにした。

 「じゃあ、行きましょうか」という永野隊長の宣言とともに、科学大好き調査隊は行動を開始した。運動不足気味の尼崎太郎は「絶対に置いて行かれないようにせなあかん!」と気を引き締めて、目の前の急勾配な山道を歩き出そうとした。ところが、先を行く永野隊長は、まだ数歩もいかないところで、ごく自然な感じで、いきなり道からそれ、急勾配の道なき斜面の藪の中を上り始めた。

 環境調査員にとって、人が歩けるように設けられた「道」というものは、初めから存在していないというか、全く意味をなさないものなのであった。

 あわてて尼崎太郎と酒井編集長はあとを追った。

永野さんは当たり前のように全然当たり前じゃない急斜面の藪の中を歩いていく

 すると、永野さんは斜面の途中で立ち止まり、いきなり猛烈な勢いで足下をピッケルで掘り始めた。

 「こういうガレガレしたところにミミズがいれば、タカチホヘビが隠れている可能性も高いんですよ」(永野さん)

 タカチホヘビはガレ場や落ち葉が厚く堆積した場所など、いわゆる“脆弱な場所”を好む。また、過湿にも乾燥にも弱いデリケートなヘビでもある。よって、人の目には同じように見える環境でも、タカチホヘビが生息するのに適した環境であるかどうかの違いは、その周辺を含めて、一帯の環境が多様であるかどうかの指標になるという。

 つまり、タカチホヘビが発見できれば、その場所では多様性が維持されている証拠となり、自然環境が豊かだと判断できるのである。

石などの瓦礫の下に湿った土が隠れているような場所には、ミミズが潜んでいる。このミミズをねらうタカチホヘビが見つかれば、それは多様な自然環境が維持されているという指標につながるのだという(画像クリックで拡大)