伝説のギタリスト、マーティ・フリードマンがJ-POPサウンドを分析する月刊誌「日経エンタテインメント!」好評連載がネットに進出。Web版第2回は、「オレンジレンジ」「オールジャパンゴイス」「チャットモンチー」をメタル斬り!(※ちなみに現在発売中の本誌6月号では「サンボマスター」「ビート・クルセイダース」「ケツメイシ」を斬っています。こちらもどうぞ!)。


 オレンジレンジの新曲『イカSUMMER』は、タイトルのダジャレが最高じゃん。僕、アメリカ人だからダジャレ大好きで、よくメールで「おつかれサマー」とか「おやすミッキーマウス」とか使ってます。こんなこと書くと、ロッカーとしてはイメージダウンになっちゃうかもだけど(笑)。

 そのダジャレの部分も含めて、この新曲は、いかにも夏真っ盛りで、アゲアゲな歌詞が超楽しい。沖縄のビーチでみんなでバレーボールしてて、ビール飲みながらバーベキューやってるみたいなイメージが、自然と頭に浮かんでくるんだよね。どうやってこんな楽しい雰囲気を作り出してるのか、一度レコーディングをのぞいて研究してみたいくらいです。

 『イカSUMMER』もそうだけど、オレンジレンジの曲って単純に聴こえるのに、ものすごく複雑なアレンジになっているんだよね。そのアレンジがフックになるから、ずっと聴いていても全然飽きない。それでいて何も考えないで聴く分には、その複雑さを全く感じさせない。これって、実はすごいことだよ。

オレンジレンジ
『イカSUMMER』
カネボウ化粧品「ALLIE」CMソング。「この曲は生バンドだけでは、たぶんカバーできないね。アレンジが複雑すぎるから。カラオケも難しくって、楽しめないかも」。

 だけど、この曲はちょっとメロディーがたくさんありすぎで、フレーズが印象に残らないかも。だから覚えやすくてキャッチーというオレンジレンジのいい面が少しだけ足りないんだよね。まぁ聴けば楽しいから許せるけど。

 この曲で特徴的なのは、曲のあちこちに「合いの手」が入るってこと。それって洋楽のロックにはあんまりなくて、日本ならではの現象です。コーラスのパートも単にハモるだけじゃなくて、ボーカル同士の掛け合い中心だから、グループ全体の一体感がビシビシ感じられて、ますます楽しさが広がっています。

 この豪華な合いの手の使い方、プチ“モーニング娘。”化?って感じちゃいました(笑)。僕が尊敬しているつんく♂の曲も、本当は複雑なアレンジなのに、楽しさだけが伝わってくる。オレンジレンジには、つんく♂的な曲作りのセンスもあるのかもしれないね。

 そのオレンジレンジが発掘したっていうオールジャパンゴイスの『ワーニバル』は、ちょっと洋楽っぽいサウンドで、ジグソーの『スカイ・ハイ』っていう70年代に流行ったディスコソングを思い出しました。あのころのディスコソングってアメリカだともう完全に忘れられちゃったジャンルなんだけど、J-POPには似た雰囲気の曲が多いんだよね。

 でもゴイスの場合、単純に昔のディスコビートをマネしてるだけじゃなくて、そこにスカバンドの要素を足すことで、音楽的にもっとパワーアップさせてる。それでいてサビがくるとSMAPの曲みたいな、いかにもJ-POPな歌メロも入ってくるから、普段は歌謡曲しか聴かない人にもアピールできるんじゃないかな。

オールジャパンゴイス
『ワーニバル』
沖縄出身、ホーンを含む8人組バンド。「若いのにホーンの使い方が超うまい。ロックとホーンの組み合わせって意外に難しいんだけど、全然違和感ないです」。


チャットモンチーと少年ナイフの違い

 チャットモンチーは、初めて聴いたとき、僕の大好きな日本の女の子バンド、少年ナイフみたいなバンドが出てきたって思って、すごくうれしくなりました。音がスカスカな感じとか、ちょっとヘタウマっぽくてシンプルな歌詞のボーカルとか、似てるところが多いんだよね。

 ただ少年ナイフのように、ニルヴァーナとかメタリカとかみたいなアメリカのミュージシャンのカリスマになれるかは微妙だけど。少年ナイフの魅力って、本当に楽器弾けるのっていう危なっかしいプレイ、あやしいビート感なんだけど、チャットモンチーはもっと洗練されちゃっているから(笑)。少年ナイフからアマチュアっぽさとパンク魂を抜いたのがチャットモンチーかも。

チャットモンチー
『女子たちに明日はない』
徳島出身、女の子3人組バンド。「3人ともかわいいのに、かわいくない女の子が歌いそうな音楽(笑)。だから男の子にも女の子にも人気がありそうな感じです」。

筆者紹介 マーティ・フリードマン
 アメリカ・ワシントンDC出身。世界でアルバム1000万枚を売り上げたメガデスの全盛期のギタリスト。J-POPに造詣が深く、日本語も堪能。現在は東京を拠点に、音楽活動のほか雑誌やテレビで活躍中。日経エンタテインメント!の連載「J-POPメタル斬り」も大好評。公式ページは英語版日本語版がある。

著者

マーティ・フリードマン

 90年代、ヘビーメタルバンド、メガデスのメンバーとなりアルバムセールスを1300万枚超えの世界的なスーパーバンドへと導いたギタリスト。その後、J-POPに興味を持ち、メガデスを脱退。活動の拠点を東京に移し、ミュージシャンやプロデューサーとして活動している。11年9月には好評のJ-POPカバーアルバム第2弾『TOKYO JUKEBOX2』を発売した。発売中のSMAPの最新アルバム『GIFT of SMAP』(ビクター)では、木村拓哉のソロ曲『La+LOVE&PEACE』の作・編曲とギター演奏を担当するなど、他のアーティストへの楽曲提供、アレンジ参加など多数。日本の音楽や日本語の魅力について、外国人やミュージシャンならではの視点で様々なメディアにおいて語っている。「日経エンタテインメント!」の連載「J-POPメタル斬り」も大好評。公式ページはこちら