iVDRは世界初の汎用リムーバブルHDDであるだけに未知数の部分が多い。また、ユーザーからすると、対応器機の動向や価格の推移も気になるところだ。さらに2007年5月17日に東京都内で開催された「iVDRセミナー2007」では「iVDRカード」の規格化準備や、中国放送界でのiVDR正式承認など、新たな動きも発表されている。

 そこで、iVDRセミナーの出席メンバーである日立グローバルストレージテクノロジーズ 車載/iVDR本部 iVDRビジネスマネジメント部の西田博部長と、日立マクセル グローバル営業統括本部 営業企画本部の山下伊智朗部長代理の二人に「iVDRの今」を聞いてみた。


対応テレビの登場でiVDR本格スタートを実感

増田: iVDRという新メディアを立ち上げるのは大変な作業だと思いますが、今後の普及にどう取り組みますか?

日立グローバルストレージテクノロジーズ 車載/iVDR本部 iVDRビジネスマネジメント部 西田博部長(画像クリックで拡大)

西田氏: 今までにもリムーバブルHDDはありましたが、各メーカー独自のクローズドな規格でした。著作権保護を含め、オープンな汎用規格としてリムーバブルHDDを標準化したのはiVDRが初になります。汎用メディアを世に送り出すことは、当社にとって新鮮なチャレンジだと思っています。その責任の重さと同時に、可能性の高さを感じています。普及の第一ステップとしては、iVDRの入り口を増やす、つまりiVDR対応器機を増やすことが重要と考えています。

増田: iVDR-Sが日立製作所の薄型テレビ「Woooシリーズ」に初採用されましたが、ほかのメーカーの製品にも採用されるのでしょうか?

西田氏: 当社はiVDR用HDDのサプライヤーとして、各メーカーから採用検討の問い合わせをいただいております。今回、iVDR-SがWoooシリーズに採用されたことで、メーカーからの照会の件数は一気に何十倍にも増えました。国内だけでなく海外メーカーからの問い合わせも急増しています。手応えは十分で、メディアの普及にとって、実際に使える製品が出ることはとても大切だと実感しています。

世界で初めてiVDR-Sドライブを搭載した日立製作所の薄型テレビ「Wooo XR01/HR01シリーズ」(右写真は37V型液晶搭載の「L37-XR01」)(画像クリックで拡大) 【拡大表示は画像をクリック】

iVDR-S(標準)とiVDR-S Miniに対応する「iVポケット」のほか、内蔵型の「iVDR-S ビルトイン」を搭載する(画像クリックで拡大) 【拡大表示は画像をクリック】

 

増田: 今後、どのようなiVDR-S対応機器が登場するのでしょう?

西田氏: 一般論になりますが、そう遠くない時期に、各社のPCやビデオレコーダーに採用されると予想できます。iVDR-Sは、BDなどの光ディスクにはないメリットを持っていますので、ユーザーの方々に十分に魅力的な製品を作れると思います。


今年中にもiVDR-S対応PCが登場か?

増田: PC対応もiVDR-S普及の大きなカギになると思いますが、PC対応には著作権保護やハイビジョンへの対応などのハードルがあると思います。これらをどうクリアするのでしょうか?

西田氏: 旧来のPCに対応させるのは難しいと思いますが、最新のAV対応PCでは、BD(Blu-ray Disc)やHD DVDのハイビジョンコンテンツを再生できる性能と環境が整いつつあります。これにiVDR-S規格の必須条件であるシリアルATA接続と、保護機能SAFIAを付け加えれば、比較的簡単にiVDR-Sで録画再生可能なPCが実現できると考えられます。

増田: iVDR-Sに対応するためにはPC側にどのようなスペックが求められるのでしょうか?

西田氏: iVDR-Sはカセット内にSAFIAの暗号処理エンジンを内蔵していますが、これと相互に認証してAVデータを利用するためには、PCなどの機器側にもSAFIA暗号処理エンジンが必要になります。例えば、日立製作所のWoooシリーズの場合は、テレビ内部のFPGA(Field Programmable Gate Array:プログラム可能なLSI)とソフトウエアで暗号処理を行っています。同じ仕組みをPCに組み込めばいいわけです。

 もっと低コストで実装したいということで、台湾などの半導体メーカーでは低価格なSAFIAチップセットを作ろうという動きもあります。またソフト開発の面でも、日立製作所でSAFIA暗号処理用のSDK(ソフトウエア開発環境)を商品化しています。

SAFIA暗号処理エンジンを持つ機器同士によるセキュアな伝送を実現するSAFIA規格(SAFIA License Group 日立製作所 セキュリティ・トレーサビリティ事業部 助田裕史氏の講演「コンテンツ保護技術“SAFIA”~現状と今後の展望~」より引用)(画像クリックで拡大) 【拡大表示は画像をクリック】

 

増田: PC上でiVDR-Sの著作権保護はどのような仕組みになるのでしょう?

西田氏: iVDR-SのHDDには2つのエリアがあります。1つは“ノーマル領域”で、デジタル放送などのコンテンツデータは、このエリアに暗号化されて記録されます。ノーマル領域の基本はUDFフォーマットです。しかしパーティションを切ることで、ノーマル領域内にNTFSフォーマットなどのエリアを作り、そこに一般のPCデータを記録することもできます。

 ノーマル領域はPCからもファイル操作が可能です。ただし暗号のカギや利用条件はもう1つの“耐タンパ領域”(こじ開けられない保護エリア)に格納されていて、これはユーザーからはアクセスできません。こうした構造のため、暗号化されたデジタル放送のデータを“ファイルとして”扱うことは可能です。しかし個々のコンテンツの利用条件を満たしたSAFIA対応機器でないと、暗号を解除して再生することはできません。

SAFIA対応PCであれば暗号化コンテンツを再生できる(左)が、SAFIA非対応PCの場合は暗号化コンテンツを再生できない(右)。また、暗号カギを保存する“耐タンパ領域”にもアクセスできない(SAFIA License Group 日立製作所 セキュリティ・トレーサビリティ事業部 助田裕史氏の講演「コンテンツ保護技術“SAFIA”~現状と今後の展望~」より引用)(画像クリックで拡大) 【拡大表示は画像をクリック】

 

 データそのものではなく、暗号カギと利用条件を一体化して厳格に管理するというのがSAFIAのコンセプトです。再生回数や日時の制限なども可能で、ビデオレンタルのようなコンテンツのデータ販売も可能になります。

増田: PCや携帯音楽プレーヤーなどで、既に多くのDRM(デジタル著作権管理)の規格が使われていますが、SAFIAは、これらとどのように共存するのでしょう?

西田氏: リムーバブルHDDのDRMはSAFIAが初となりますので、HDDに関してはイニシアチブを取れるかもしれません。といってもDRMのフォーマットには多くの種類があって、それをSAFIA方式に統一することは、まず不可能でしょう。ですから、各種DRMからSAFIA方式に簡単に変換できるように、SAFIAは既存のDRMで使われているコマンドや関数のほとんどをサポートしています。既にWoooシリーズではSAFIAとi.LINK(DTCP)間の変換を実現しています。

増田: iVDR-S対応のPCはいつごろ登場するのでしょうか?

西田氏: iVDR-Sの基本条件は比較的シンプルなので、Windowsのような基本ソフトにはあまり左右されないと考えられます。採用はPCメーカー次第だと思います。これも一般論になりますが、iVDR-S対応PCが今年中に発売される可能性は高いと予想しています。