車載HDDのノウハウで信頼性を向上

増田: iVDRはテンポラリー保存だけでなく、長期のライブラリー保存にも使えるのが特徴だと思います。とはいえ、HDDはBDなどの光ディスクよりも多くの電子部品を使っているので、ライブラリーとしての耐久性が気になるのですが、この点についてはいかがでしょう?

山下氏: カートリッジ部分は、耐久性と耐熱性の高いガラス繊維入りの特殊樹脂を採用していて、-40℃から85℃まで耐えます。この部分では自動車搭載HDDと同じ仕様といえます。このほか、衝撃をやわらげるアンチショックフレームや、緊急時のヘッド待避機能、内部空気の循環フィルターなどを採用し、記録メディアとしての信頼性を確保しています。

西田氏: 日立GSTは以前から自動車搭載用のHDDを作っていますが、これらのパーツにはヘビーデューティーな性能が求められます。HDDには高温になると保磁力が下がる特性があって、これを防止する材質のディスクやヘッドの開発を進めてきました。車載用のiVDRはもちろんですが、こうした技術をAV用途のiVDRにも生かせば、耐久性をさらに向上できると思います。


AV機器やPC用途だけでなく、車載用途にも注目されている(写真は三洋電機がiVDRセミナー2007に参考出展した「リアシートエンターテイメントシステム」(画像クリックで拡大) 【拡大表示は画像をクリック】

 

増田: HDDというとメカニカルな印象がありますが、所有して楽しいメディアに進化させるためには、手触りやデザイン性も大切ですね。

山下氏: デザイン的にHDDの角張った印象を払拭して、フレンドリーな手触りにするために、カートリッジの角を丸くしています。デザイナーからすると、もっと角を取りたかったそうですが、カートリッジの規格があるので、許される範囲でソフトなデザインに仕上げました。また、「iV(アイヴィ)」という覚えやすく呼びやすい愛称を採用することで、親しみやすさを強調しています。今後のカートリッジ規格にはメディアメーカーとしての意見をさらに反映させたいと考えています。

増田: HDDと半導体メモリーを合体したハイブリッドHDDが注目されていますが、これをiVDRに採用する予定はあるのでしょうか。AV用途でハイブリッド化は有効なのでしょうか?

西田氏: 将来的にはハイブリッドHDDもiVDRに採用したいと考えています。データ用途はもちろん、AV用途でも、録画したタイトルの番組情報やサムネイルなどをメモリー内に保存しておいて、HDDを起動せずに液晶で内容を確認できる「ハイブリッドiVDR」というのは便利だと思いますが、いかがでしょう?

増田: 大容量メディアでは検索性がカギになるので、良いアイデアだと思います。ところで、中国の放送業界でiVDRが正式に承認された、とのことですが、プロの分野ではどのような効果が出るのでしょう?

西田氏: iVDRの承認は、中国の放送界の大きな進歩に繋がると思います。iVDRはノンリニア編集との親和性や省スペース性、セキュリティの確保など、ほかのメディアにはない大きなメリットを発揮できるからです。日本の現状はまだテープ収録が多いので、デジタル編集のシステム化では先を越されてしまうかもしれませんね。


2010年には店頭価格1GBあたり50円を目指す

山下氏: ラインナップからすると、HDDの容量を上げる代わりに値段を変えない高付加価値メディアと、容量は従来と同じで値段を下げる普及メディアが考えられます。パーツとしてのHDDでは、常に最新の製造ラインを使った高付加価値路線しか選択肢がなかったのですが、パーツがメディアに進化したことで、従来の製造設備を活用した普及メディアもビジネスとして可能になると思います。

増田: iVDRは、将来にわたってメモリーカードやSSDを上回るコストパフォーマンスを実現できるのでしょうか? また、どの程度の価格を当面の目標にしているのでしょう?

西田氏: iVDR標準カセットの容量が500GBに達する2010年がひとつの勝負所だと考えています。コストパフォーマンスの高さがメモリーの1に対してHDDが10であるなら、明らかに勝てるでしょう。しかし、携帯音楽プレーヤーの例からすると、1対3や、1対4だと、使い勝手や話題性などで逆転される可能性も出てきます。ですので、まずは高性能な「TMR記録ヘッド」や「超高密度パターンドメディア」など次世代のテクノロジーで容量を着実に上げていくことです。そしてiVDRならではの使い勝手の良さや、ユニークな用途、コンテンツ利用を開拓していくことが重要だと思います。

山下氏: 価格は、2010年には店頭実販価格で1GBあたり50円程度を目指したいと考えています。

増田: 是非とも手頃なメディアにしていただきたいですね。最後に将来の展望をお聞かせください。

西田氏: iVDRは、世界初のリムーバブルHDDの汎用規格です。DVDなどと比べるとロイヤリティを低くして、敷居の低いオープンな規格を目指しています。iVDRをさらに広い世界規格にするためにIEC(International Electrotechnical Commission 国際電気標準会議)に持って行こうという計画もあります。

山下氏: 将来はコンビニでも手軽にiVDRが買えるようにしたい。それを目標にビジネスを展開する計画ですので、どうかご期待ください。

著者

増田 和夫(ますだ かずお)

デジタルAVなど先端分野が得意なオーディオ&ビジュアル評論家。PC誌やWEBでの取材&評論で活躍中。いわゆる物欲系レビューというよりは「モノとにらめっこをするのではなく、メーカーからの“ゼロ次情報”を大切にしたい。ユーザーの意見をメーカーに伝え、モノの背景にあるコンセプトと開発者のメッセージを探りたい」がモットーで、インタビューなどのジャーナリスティックな記事も得意。大の録画ファンで、エアチェック録画は1970年代から熱中。PC歴も20年以上のベテランだ。