教育雑貨店「ザ・スタディールーム」にて販売。Webサイトでも購入できる。URLはhttp://www.thestudyroom.co.jp/(画像クリックで拡大) 【拡大表示は画像をクリック】

ノンフィクションの取材旅からもどった夜のこと。
地元のターミナル駅の階段を降りていると、
ふと足下にペンキで書かれた真新しい標示を発見した。

「頭上 ツバメの巣 注意」

ツバメ?
僕は思わず立ち止まって真上を見上げた。
なるほど。天井の梁にツバメが巣を作っている。
ピィピィと鳴くヒナの声がなんとも愛らしい。

僕が見上げたのにつられて、
数人の人たちが足を止めて天井を見上げた。
「あら、かわいいわねえ!」
おばちゃんが大きな声を出すものだから、
見上げる人の数がさらに増えた。
やがては後ろから押し寄せる人波がつっかえて、
階段はちょっとした渋滞になってしまった。

天井を見上げた人たちは、みんな一様に
口をぽか~んと開けたアホ面で、
ヒナとよく似て、ちょっぴりかわいい(笑)

それにしても……、
フンを落とすツバメちゃんの巣を強制撤去しないで、
人間さまが除けて通ろうではないか!
というN駅職員さんの心意気に、
僕の気持ちはほっこり和んでしまった。

再び歩き出そうとして足下を見ると、羽根が一枚落ちていた。
白っぽくて柔らかな羽毛である。
僕はそれを拾い上げて、階段のはじに寄った。
そして、首から下げている顕微鏡でそれを拡大して見た。

「……!!!」

うわ~ぉ♪
いっつ・そー・びゅーてふぉー!!

感動した。
これまでカラスやハトの羽根も同じ顕微鏡で見たことがあるが、
どれもドキッとするほどに艶かしくて美しかった。
自然の造り出すものというのは、
拡大してみると、実に精緻かつ華麗で感嘆させられる。

この顕微鏡で、葉っぱの裏側に生えている白い毛や、
アリやクモなどの虫、自分の指の指紋や爪などを見ても面白い。

人工物もなかなか興味深くて、
例えばガムテープの粘着面を拡大してみると
茶色い発泡スチロールみたいに見えるし、
もっと驚くべきは、パソコンの液晶画面の白い部分を見ると、
ナント、黒い線の入ったチェック柄に見えるのである!
白地に黒いチェック……なのに、見えるのは白だけ。
実に不思議な発見だと思いませんか?

ところで、この顕微鏡、首から下げているといっても、
まさか理科の実験で使うアレではない。
単三電池を半分に切ったくらいの大きさの、
『ミニマイクロスコープ』という小型顕微鏡なのである。
小型といえども倍率は15倍もあって、思いがけず高性能。
もともとは、上野駅構内にある『ザ・スタディールーム』という店で
一目惚れをして買った《キーホルダー》なのだが、
僕はこれをひょいと改造して黒い革ひもを通し、
ペンダントヘッドとして使っているのである。
銀色なので、シルバーアクセサリーと組み合わせてもカッコいい。

この顕微鏡、人付き合いが苦手な人にもオススメである。
首にかけた状態で初対面の人と逢えば、ほぼ間違いなく
「え、それ、何ですか?」と訊かれるので、
相手の腕の毛や指紋でも見せてあげれば
「うわ、すごい、おもしろいですね!」
と、会話のきっかけになるのだ。

合コンでは、女の子と仲良くなるツールとしても
役に立つのではないだろうか。
まずあなたは、こんなことを言うのだ。
「君のキューティクルをチェックしてあげるよ♪」
(本当は15倍じゃキューティクルなんて見えないけれど……)
で、彼女の髪の毛に触れながら、顕微鏡を覗き込む。
この時点でもう、二人の距離は急接近だ♪
そして「うわ、すごく毛先が痛んでるよ~!」と嘘をつく。
すると、女性はドキドキしながら、
「え、うそ、どれどれ、見せて……」
「うん、いいよ、ほら」
「ん……あれ? なんだ、見えないじゃーん。もぉ、うそつきぃ~♪」
「ごめんごめん、でもさ、このおしぼり見てごらん、おもしろいから」
「うわー、ほんとだー。すごーい!」
キューティクル・チェックで胸をドキドキさせられるので、
彼女は心理学でいう《吊り橋効果》にまんまとハマり、
気づけばあなたにメロメロになっているはず(なのか?)。

実用的な視点から言うと、
指などにトゲが刺さったときも便利だし、
電車がなかなかこなくても、駅のホームでヒマをしないで済む。
手持ちのモノをなんでもいいから拡大して見ていれば、
これが意外なほどおもしろくて、時間なんていくらでもつぶせるのだ。

この大きさでも倍率は15倍。液晶画面を見れば画素までしっかりと分かる(画像クリックで拡大) 【拡大表示は画像をクリック】

これからの季節なら、飛んでいる蚊をつかまえて
よくよく観察してみるといい。
冷房代が浮いてお得だ。
見慣れた蚊が、実は同じ地球の生き物とは思えないほど
奇怪な生物だったということに驚き、あなたは鳥肌を立てるだろう。
ぞぞぞっと寒気がして、つまり避暑効果もあるのである。

こんなに多用途かつコンパクトなこのツール。
お値段はたったの714円である。
これは買いだと思うのですが、いかがでしょう?


筆者紹介 森沢明夫(もりさわ・あきお)
ノンフィクションライター・エッセイスト。「ラストサムライ 片目のチャンピ オン武田幸三」(角川書店)で第17回ミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。 須藤元気との共著「風の谷のあの人と結婚する方法」(ベースボールマガジン 社)は14万部を超えるベストセラーになった。その他の著書に「あおぞらビー ル」(オーシャンライフ社)などがある。現在、ライフワークとして日本の海岸 線を一本の線でつなぐ旅を楽しんでいる。その旅の様子は「オーシャンライフ」 誌に紀行エッセイとして人気連載中。