読者が投稿した画像でも管理者が逮捕!?

 インターネットの掲示板「画像ちゃんねる」の管理者が5月23日に逮捕され、これをきっかけにほかの画像掲示板サービス「画像掲示板がむしゃら」「カサマツさん」なども閉鎖された。ネットの世界では、インターネットの規制が過度に強まるのではないかという懸念の声も多く聞かれた。

 だが今回の「画像ちゃんねる」管理者逮捕の経緯を詳細に見ていくと、“隠された真相”のような話はないものの、事実関係で気になる点がいくつかある。

 まず、いったいなぜ「画像ちゃんねる」の管理者が逮捕されたかだ。容疑は「わいせつ図画公然陳列容疑」とのことなので、あたかも管理者が問題画像を掲載していたかのような誤解を招いている。しかし、各種の問題画像は利用者が勝手に投稿したものであって、運営側が意図的に陳列したしたわけではない。管理者が責任を問われたのは、投稿された画像をそのままにし、不特定多数に閲覧させたことによる。このため、管理者は取り調べに対して、「投稿したほうが悪い」と容疑を否認しているとのことだ。

 こうした理屈が裁判で認められるかというと、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(通称:プロバイダ責任法)に関連する難しい議論がありそう。「はてなダイアリー」のブログ「奥村徹弁護士の見解」のエントリー「投稿サイト管理者ら逮捕=わいせつ画像掲載-年間アクセス7362万件・神奈川」によれば、「管理者が刑事責任を負う理屈はわいせつ図画公然陳列でも児童ポルノ公然陳列でも同じです」とのことなので、いずれにせよ掲示板管理者の責任は問われるということになりそうだ。

「画像ちゃんねる」の入り口。デザインが「2ちゃんねる」に似ていることから、一部で「2ちゃんねる」も摘発か、とうわさになったが「2ちゃんねる」についての問題は浮上していない


一罰百戒!「画像ちゃんねる」は目立ちすぎた!?

 また、今回の逮捕だが突然の事態だったのかというと、そうではないらしい。ウィキペディアの「画像ちゃんねる」には、すでに今年の2月21日の時点で管理人は家宅捜索を受けていたと書かれてある。。

 その様子は管理人自身のブログ「さんぞう@画像ちゃんねる管理人★のblog」の2月26日のエントリー「シャバ憎ですよ。」にも掲載されている。これによれば、この時点での捜索で150人もの捜査員が投入されていたとのことで、かなり大規模な捜索だったことが分かる。

 この時点での管理者の感想には「無修正といっても確かな線引きがあるわけじゃなく、警察や裁判所のサジ加減でどうにでもなる感じなので、今回のチェックでは基準を思いっきり厳しくしています」とあるので、運営側としても、2月以降はわいせつ画像への対応を強化していたようだ。

 これが事実だとすると、逮捕は管理人の対応強化にもかかわらず実行されたことになる。それは「警察や裁判所のサジ加減」を管理人が読みを違えたからかもしれない。が、先のエントリーで以下のような感想が書かれているのを見ると、この種の画像掲示板に対する“見せしめ”だったのではないかとも思える。

でもまぁ、「画ちゃんは有名になりすぎた」というフレーズを刑事さんから聞けた時は不思議な気分でした^^;

 新聞などの報道によると「画像ちゃんねる」が広告掲載などにより月あたり約360万円の収益があったとのこと。つまり、稼ぎすぎた(=目立ちすぎた)のだ。また、ウィキペディアの項目に「25台の運営サーバーが日本に置いてあったのも立件可能であった要因のひとつともされている」とあるように、押収されたサーバー本体が日本国内に設置されていたこともターゲットにされた理由としてありそうだ。国外サーバーを使って運営されていた場合、150人からの捜査員の旅費や機材の搬送費用などを考えると、今回のような逮捕は現実的でない。

現在でも「画像ちゃんねる」は、すべての画像が表示不能になっているものの、閉鎖はされていない。管理者としては再開を期待しているのだろう
【画像をクリックすると拡大表示されます】


問題は“わいせつ”よりもプライバシー

 今回の事件だが、逮捕理由から当然、わいせつ画像という点が注目される。しかし、今回の掲示板管理者の逮捕が単にわいせつ画像の問題ではないのではないか。もっと問題となりそうな画像がインターネット上にあふれているのが現実だからだ。例えば、画像センサーシップ(検閲)フィルター機能の弱い「百度画像検索」などを使うと、簡単にわいせつ画像を検索できてしまう。しかし、警察にはこうした問題に関心を寄せている気配はない。

 むしろ、今回の捜査の経緯を追っていくと警察はプライバシー保護のほうに関心を置いていたようにも思える。と言うのも、2月時点での捜索の目的は、元交際相手の写真を画像掲示板に掲載した男の逮捕に関連したものだったからだ。この事件は、無断で画像を掲載された横浜市内の女性が2006年7月に県警へ被害相談をしていたことがきっかけだった。

 「ウィニー」などのファイル共有ソフトによって、“わいせつ”なプライベート写真が流出し、ネット上に公開されてしまう。警察は、こうした問題への対応を視野に入れていたのではないだろうか。

 世間に公開すれば“わいせつ”とされる写真でも、当人同士が楽しむのであれば“趣味の範囲”としか言えない。たとえそれらがファイル共有ソフトによって流出したとしても、公開する仕組みがなければダメージは少ない。警察は、画像の掲示板を規制することがプライバシーの保護につながると考えているのだろう。

大手画像掲示板の1つ「VIPろだ」は休業中だが、警察の狙いが理解されれば再開されるのだろうか

筆者紹介 佐藤 信正(さとう・のぶまさ)
テクニカルライター。1957年東京生まれ。国際基督教大学卒業後、同大学院で言語学を学ぶ。小学生のときにアマチュア無線技士を免許をとり、無線機からワンボード・マイコンへ興味を移す。また初代アスキーネットからのネットワーカー。通信機器や半導体設計分野のテクニカルライターからパソコン分野へ。休刊中の「日経クリック」で10年間Q&Aも担当していた。著書「Ajax実用テクニック」「JScriptハンドブック」「ブラウザのしくみ」など。

著者

佐藤 信正(さとう のぶまさ)

テクニカルライター。1957年東京生まれ。国際基督教大学卒業後、同大学院で言語学を学ぶ。小学生のときにアマチュア無線技士を免許をとり、無線機からワンボード・マイコンへ興味を移す。また初代アスキーネットからのネットワーカー。通信機器や半導体設計分野のテクニカルライターからパソコン分野へ。休刊中の「日経クリック」で10年間Q&Aも担当していた。著書「Ajax実用テクニック」「JScriptハンドブック」「ブラウザのしくみ」など。