伝説のギタリスト、マーティ・フリードマンがJ-POPサウンドを分析する、月刊誌「日経エンタテインメント!」誌の好評連載が、ついにネットに進出。記念すべきWEB第1回は「コブクロ」「ゆず」「YUI」をメタル斬り!(※ちなみに現在発売中の本誌5月号では「mihimaru GT」「平井堅」「リア・ディゾン」を斬っています。また5月2日発売の6月号では「サンボマスター」「ビート・クルセイダース」「ケツメイシ」をメタル斬りする予定ですので、お楽しみに)


 昔、メガデスというヘビーメタルのバンドでギターを弾いていた僕ですが、J-POPが大好きになって、今ではバンドも辞めて日本に住んでいます。「日経エンタテインメント!」では、僕が、外国人、ギタリスト、作曲家という視点からJ-POPのヒットに迫るコラムを連載していますが、その番外編をネットでお送りしたいと思います。

 ゆずとかコブクロとかアコギ系の男性2人組ユニットの活躍が目立ってるよね。それって、アメリカの音楽シーンだと、おそらくありえない現象なんです。

 何でかっていうと、アメリカではギターを買いたがる若い男って、ほとんどがロックかメタルの影響を受けてるから、アコースティックなユニットなんてまず組まない。わざわざアコギを選ぶ人っていうのはソロシンガーの場合が多いんだけど、その弱点はゆずやコブクロみたいなハモりがないこと。

 アメリカの場合、ミュージシャンになる入り口ってジャンルによってスタイルが決まっちゃう。アコースティックならソロ、ロックならバンドみたいに。だけど日本ではもっといろんな入り口があるんだよね。それってすごくいいことだし、うらやましいなって思います。

 コブクロの新曲『蕾』は、洋楽の影響ゼロで、こたつに座って、みかん食べながら、テレビドラマ見てるイメージ。ギターとボーカルだけのスカスカのサウンドと、温かくていやされるようなアレンジで、子どもからおばあちゃんまで楽しめる、本当においしい曲です。

 男2人だけのハーモニーって、実は超難しいの。ロックだったらいろんな楽器の音で結構ごまかせるんだけど、こういう裸みたいなアレンジの曲できれいに2人だけでハモるのは、特に難しいことなんだよね。

コブクロ
『蕾』
ドラマ『東京タワー』主題歌。「こういう老若男女に受け入れられる曲が存在しうるのは、(音楽の嗜好性が多様化した)今の時代では日本だけかもしれないね」。

 ゆずの新曲『春風』も、超日本的な歌メロに、演歌っぽいコード進行の曲で、すごく僕のツボでした。1つだけ気になったのは、コブクロと比べると、ボーカルのチューニングがちょこっとだけ怪しかったこと。高いところでハモってるときに、もう半音下げてみたら、もっと自信持って歌えるんじゃないって。

 でも、ゆずの人気の秘密は、そういう「頑張って(無理して)歌っているからこそ生まれる親近感」にあるんだろうし、アメリカ人の僕からすると、それは最高に面白い現象です。日本のライブではミュージシャンとお客さんの距離感を縮めようとすることが多いじゃないですか。お客さんがよく「頑張って~」とか言うけど、それってアメリカじゃ絶対ありえない。

 最初に日本に来たときは、この現象はあんまり好きじゃなかったです。「バンドとお客さんが同じ存在なんてイヤだ!」って思ってたけど、日本に長く住めば住むほど、そのよさがすごく分かってきました。ゆずとファンの関係は、そういう日本の文化ならではの一体感の象徴なんだと思います。

 ゆずもコブクロもストリートライブで練習したらしいけど、それもアメリカではマイナーかな。ストリートミュージシャンは、どちらかというとホームレスみたいなイメージです。でも日本ではCDを出しているのにストリートでライブする人もいるじゃん。アメリカではありえない。

ゆず
『春風』
1年2カ月ぶりの新曲。「バックのバイオリンは誰が弾いているのか知らなかったけど、いいなって思っていたら、葉加瀬太郎さんだって書いてあって、さすがと」。


YUIはヒラリー・ダフっぽい早口がいいね

 『CHE.R.RY』がヒットしているYUIは、僕の最近のお気に入り女性シンガーです。サウンド的には、まぎれもなくJ-POPだけど、最近聴いた中だと、一番アメリカの音楽の味が入ってる。YUIの歌をヒラリー・ダフが歌ったとしても、きっと全然ありじゃん。僕はヒラリー・ダフの大ファンでもあるけど、彼女の曲って、洋楽としてはちょっとJ-POPっぽいニュアンスが多いんだよね。

 ヒラリー・ダフって時々すごい早口で歌ったりするけど、YUIのボーカルにもそういうところがある。超早口じゃなくて、「プチ早口」な感じが聴いててすごく気持ちいいよね。歌詞のセンスもすごくよくて、曲の響きのセンスが無意識に分かっている気がします。

YUI
『CHE.R.RY』
au「LISMO」CMソング。「前回のシングル『Rolling star』はハードロックだったけど、今回はかわいいポップソング。超幅広い歌を作って歌えるのも尊敬します」。

筆者紹介 マーティ・フリードマン
 アメリカ・ワシントンDC出身。世界でアルバム1000万枚を売り上げたメガデスの全盛期のギタリスト。J-POPに造詣が深く、日本語も堪能。現在は東京を拠点に、音楽活動のほか雑誌やテレビで活躍中。日経エンタテインメント!の連載「J-POPメタル斬り」も大好評。公式ページは英語版日本語版がある。5月12日にリキッドルームでライブを開催。

著者

マーティ・フリードマン

 90年代、ヘビーメタルバンド、メガデスのメンバーとなりアルバムセールスを1300万枚超えの世界的なスーパーバンドへと導いたギタリスト。その後、J-POPに興味を持ち、メガデスを脱退。活動の拠点を東京に移し、ミュージシャンやプロデューサーとして活動している。11年9月には好評のJ-POPカバーアルバム第2弾『TOKYO JUKEBOX2』を発売した。発売中のSMAPの最新アルバム『GIFT of SMAP』(ビクター)では、木村拓哉のソロ曲『La+LOVE&PEACE』の作・編曲とギター演奏を担当するなど、他のアーティストへの楽曲提供、アレンジ参加など多数。日本の音楽や日本語の魅力について、外国人やミュージシャンならではの視点で様々なメディアにおいて語っている。「日経エンタテインメント!」の連載「J-POPメタル斬り」も大好評。公式ページはこちら