「子供の頃から宇宙に持っていた夢がぶち壊された!」

 とテレビで激白なさっていたのは「宇宙戦艦ヤマト」「宇宙海賊キャプテンハーロック」そして「銀河鉄道999」など数々の名作を生み出した、日本が世界に誇るスペースオペラの巨匠・松本零士先生です。

 これは先日の冥王星リストラ事件について松本先生が報道番組で語ったもので、冥王星が太陽系の惑星から除外されたというニュースに対し、天文学界、教科書会社、占い師などが「まあ、冥王星がなくなるわけじゃないし……」といったような比較的逃げ腰なコメントを残していたのに対し、唯一「太陽系の惑星だと固く信じていた!」「夢がぶち壊された!」とほおをプルプルさせながら激高していたのが松本先生です。

 それもそのはず、松本先生の作品にとって冥王星とは「太陽系最後の惑星」であり、「宇宙戦艦ヤマト」では敵の前線基地があったり、「銀河鉄道999」では太陽系のラストステーションだったりと、外宇宙との境界に位置づけられる重要な星なのです。もちろん、「キャプテンハーロック」にも冥王星のエピソードが出てきます。

 と、いうことで松本先生の作品を鑑賞し、改めて冥王星の重要性、意義、その魅力について検証してみたいと思います。

 今回ご紹介するのは「メーテルレジェンド」。メーテルと言えば、「銀河鉄道999」知る人なら誰もが憧れた女性。母のような優しさと女神のような美しさを併せ持った彼女は、少年たちにとって"青春の幻影"でした。

15歳のメーテル。1000年女王の血を引くメーテルは数万年の寿命を持つと言われている

 この作品は、メーテルが「銀河鉄道999」の主人公・鉄郎と出会うずーっとずーっと前の物語です。

1000年周期の軌道を外れ、アンドロメダ星雲の暗黒太陽にいずれ飲み込まれる運命にある星、惑星ラーメタル。女王ラー・アンドロメダ プロメシュームは、飢えと寒さから民を救うために天才科学者:ハードギアの人類機械化計画を認めざるを得なくなってしまう。ハードギアによって冷淡かつ強制的に進められる人類の機械化に対し、ハードギアに立ち向かう勇気ある二人のプリンセス:メーテルとエメラルダス。それぞれの複雑な思いが交錯し、運命の戦いが今はじまる!!

 と、いうことなんですがメーテルさん、なんと王家の娘でしかも双子姉妹だったんですね! 双子の姉エメラルダスはメーテルと違って勝ち気な女性ですが、それはそれで魅力的(彼女は後に宇宙海賊となる)。

 メーテルはおなじみの黒い衣装ではなく、白を基調とした清楚な服装、顔つきもまだ少女の面影を残しています。15歳のメーテルかわいいですね~。ちなみに「銀河鉄道999」でのメーテルはバイオテクノロジーによって作られた体で、生身の体は冥王星の氷の下に埋められています。だから少し顔つきが違うんですね。

白い衣装も似合います。ちなみに大人のメーテルが黒い服を着るのには、機械帝国崩壊のために命を落とした少年たちへの“喪服”の意味が込められている

 「メーテルレジェンド」は、松本作品の特徴である機械と人間、宇宙、クラシック音楽といった要素がふんだんに盛り込まれ、見ているうちにすっかり少年時代に引き戻されてしまいました。久しぶりに壮大なロマンを感じた作品です。アニメーションも美しいですし、メーテルの声を担当する雪乃五月さんもばっちり雰囲気にはまっています(ちなみにナレーションは、銀河鉄道999でメーテルのVCを務めた池田昌子さん)。

 松本先生の作品は「キャプテンハーロック」にしろ「銀河鉄道999」にしろ、1本1本が独立しているように見えるのですが、実は裏で非常に深く絡み合っているのが特徴です。999号が宇宙海賊となったエメラルダスに襲われちゃったり、ハーロックとメーテルはなぜか面識があったり……。松本先生自身の中に1つの大きな宇宙があって、そこで起こるドラマをアニメ・漫画という形で表現しているからできる創作なのでしょう。だから今回のような「メーテルレジェンド」といった作品が生まれたのだと思います。

 余談ですが、以前、私は松本先生にお話を伺う機会がありまして、その時に彼の宇宙にかけるロマンと情熱に圧倒された覚えがあります。宇宙と機械とドクロについてなら何時間でも話続ける松本先生のことですから、今回の冥王星リストラ事件に激怒するのも納得がいきます。あの天文学界の決議の前に、スクリーンで松本先生の作品を流せば冥王星は惑星のままでいたのではないか、と思うぐらい松本先生の宇宙愛は深いです。

 今回は若かりし頃のメーテルの物語「メーテルレジェンド」を取り上げましたが、BIGLOBEでは現在、期間限定で「松本零士特集」をやっています。「ガンフロンティア」や「コスモウォーリアー零」なども同時配信中です。

 今週は松本零士の「メーテルレジェンド」でリストラされた冥王星の復活を密かに願ってみてください。

右からメーテル、姉エメラルダス、母ラー・アンドロメダ プロメシューム

配信元: :BIGLOBEストリーム
写真提供:(C)松本零士/円谷クリエイティブ/アートコレクションハウス/エイベックス

筆者紹介 石井アキラ
いしい・あきら●ブレイン・ワークス所属。本業は編集者。紙媒体やレコードを愛するバリバリのアナロガーだが、映像・音楽・スポーツといったエンターテイメント全般、著作権に関し造詣が深く、それを活かしたライター活動も行っている。デジタル世界でのエンターテイメントの未来、が今後追っていきたいテーマ。