好きなことより得意なことを仕事にするべき?

 私がインターネットを見るようになったのは、98年のこと。海外でマニアックな個人サイトがちらほら出てきた頃で、それだけを見ていても面白かったが、何よりも私が感動したのは、日本の女の子たちが作っていた可愛らしい個人サイトだった。今のように気軽に誰でもブログを始められる環境ではなく、ページミルをはじめとするホームページ作成ソフトが使われていた頃の話である。

 素敵なトップページを作って、自分のお気に入りの映画やCDを紹介したり、ちょっとしたコラムを女の子たちが書いているのを見て、私はひどく羨ましかった。どのサイトもまぶしかった。

 その頃の私の主な仕事はビジネス誌のインタビュー記事と、実用書の執筆だった。大学時代から週刊誌でライターの仕事を始めた私は、好きなことを好きなように書く機会を永遠に逸してしまったと感じていた。映画や音楽が大好きだったけれども、それについて書きたいなんて思ってもみなかった。好きなことより、得意なことをやるのがプロの仕事なんだと思っていた。


読者がくれた言葉で仕事が変わった!

 インターネットと出会い、自分がサイトをやるようになって何よりも良かったことは、何を書くのも自由なんだ、好きなことについて好きなように書いていいのだと思えたこと、それを叶えてくれる場所を見つけたことかもしれない。当たり前と言われればそれまでだけど、書くことを仕事と割り切りながら、そんな自分に傷ついていた私にとって、自分のささやかなお気に入りについて好きなフォーマットで書いて、多くの人に見せられる場があるということは夢みたいな話だったのだ。

 そしてサイトを始めて、夢中で好きなトピックスについて書いていた時、私のページを読んでくれている大学生の女の子からこんな質問を受けた。

「二十歳の乙女は、どんな音楽を聞いたらいいですか?」

 彼女みたいな女の子向きに、あまりマニアックではなくて、趣味のいい女性たちの間で定番になっているCDや小説、映画のリストがあったら面白いと思って、私は「二十歳シリーズ」というコンテンツをサイト内に作った。それを見て面白いと思って声をかけてくれたのが、復刊準備をしていた「オリーブ」の編集長と、晶文社の書籍担当者だった。こうして、「オリーブ」での連載「東京プリンセス」と、『オードリーとフランソワーズ~乙女カルチャー入門~』が生まれた。

 私は、自分でもサイトを持って好きなことが書けるかもしれないと気がつかせてくれた女の子たちと、サイトを始めたごく初期に、たまたまページを見つけて私を励ましてくれた読者を忘れない。それで仕事の内容が大きく変わったのだから。

(「正しい仕事の運び方」につづく)

筆者紹介 山崎 まどか(やまざき・まどか)
 1970年、東京生まれ。乙女コラムニスト。大学在学中から本格的にライターとして活動を始める。雑誌「オリーブ」にコラムを連載したことがきっかけとなり、以後、少女雑誌のカリスマ的コラムニストとして活躍。カルチャー誌から女性誌まで幅広く手掛ける。現在、「ar」「FRaU」などにコラムを連載中。著書に『オードリーとフランソワーズ~乙女カルチャー入門~』『ブック・イン・ピンク~おしゃれ古本ガイド~』(晶文社)、『乙女日和』(アスペクト)など。『乙女日和』とのタイアップでコンピレーションCD『乙女日和~日々の暮らしの音楽手帖』(東芝EMI)も出ている。近作は『女子映画スタイル』(講談社)、『ハイスクールU.S.A.』(長谷川町蔵氏との共著 国書刊行会)。自身のサイト、ロマンティック・オ・ゴー!ゴー!で近況などを随時アップしている。