ウォール真木の実家は温泉旅館。“お風呂”と言えば、温泉が絶え間なく流れ出る、これまた泳げるぐらい広い浴槽という、かなり恵まれた場所で育ったワケです。しかし、そんな自分の置かれた環境になんの特別さも感じず、またそれに感謝することもなく親元を離れた18歳の春。アメリカに渡ったワタクシの前に立ちはだかった、異文化最大の壁。それはアメリカのお風呂事情だったのです。

 まずバスタブの形が不便。幅はある、長さもある、でも深さが無いっ! 腰ぐらいまでしかお湯に入ることができないのです。最近は「半身浴」なんて言葉が一般的になりましたが、今まで日本の実家で深々と首までたっぷりのお湯に浸かっていたワタクシにとって、下半身しか入浴できないなんて許せない事実でした。なんとか全身お湯に入りたいと、試しに長い浴槽に寝転がってみます。しかし肩まで浸かろうとするとヒザが出る。ヒザを温めようとすると肩が水面から飛び出る。この中途半端な大きさが、さらにストレスを溜めます。ぐぐぐ……(怒)

 さらにアメリカのお風呂には困った事情が。浴槽にたっぷりと温かいお湯を溜めようとしても、途中で蛇口から出てくるお湯がぬるくなってしまうのです! 熱めのお風呂が大好きなウォール真木にはこれも困った事態。でも、なんでお湯がなくなっちゃうの!?

 実は、これはアメリカの給湯方式のせいなのです。こちらの一般家庭の給湯システムは、9割以上がいまだにタンク式。いわゆる貯湯式ボイラーというヤツが使われています。大きなタンク内で水からお湯を沸かし、それを家の中の水道に送り込みます。一定の量のお湯が無くなったら水が補給され、それがまた温められることになるのですが、大量のお湯が一度に使われた場合は、その加熱が追い付きません。すると結果として、お湯になっていない冷たい水のまま水道に……、というワケなのです(涙)

これが一般的な家庭のボイラー。地下室に置かれています。中でお湯を沸かし、これ一台で家中のお湯を供給します

 どうして日本の瞬間式湯沸かし器のように高効率で、湯切れすることのないシステムは普及していないのでしょう。便利で合理的なモノが好きなんじゃないのか? アメリカ人!?

 でも考えてみると、アメリカ人は湯船はめったに使わないシャワー党。こちらはそんなに湯の量も使わないし、結局タンク式給湯器でも十分まかなえるんですよね。日本のようにコンピュータ制御付きの瞬間湯沸かし器のが普及するのは、どうやら夢のまた夢のようです。あーぁ……。

筆者紹介 ウォール真木(うぉーる・まき)
海外生活がそろそろ人生の半分にリーチしかけている主婦兼ライター。主にインターネットからの情報で日本人のアイデンティティーを保持しているつもりだが、周囲からは否定されている。現在2児の母で子育てに奮闘しつつ、Narinari.comで執筆活動中である。著書に「アメリカの弁護士は救急車を追いかける―アメリカの不思議なジョーシキ114」(宝島社文庫)。

著者

クローニン真木(くろーにん まき)

 海外生活が人生の半分を超えてしまった、主婦&看護師兼ライター。日本人アイデンティティーを保持していると信じつつも、近年めっきり周囲からは否定されつつある。現在2児の母で子育てに奮闘しつつ、Narinari.comで執筆を展開。著書に「アメリカの弁護士は救急車を追いかける―アメリカの不思議なジョーシキ114」(宝島社文庫)。現在、月刊誌「この映画がすごい!」(宝島社)、「TOEIC Test プラス・マガジン」(リント)などに記事を提供している。日経トレンディネットでは以前に「アメリカ在住ミセス・マキのUSA『お茶の間』通信」を連載。